PET画像の画質とSUV値の精度を両立できる
PET画像の画質とSUV値の精度を両立できる
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 GEヘルスケア・ジャパンは、PETとX線CT装置を一体化したPET/CT装置向けのPET画像再構成機能「Q.Clear」を2014年4月11日に発売した。PET画像の画質と、がんの活発度の定量的指標となるSUV値の精度を両立できる点が特徴だ。がんの治療前後でSUV値を比較することで、治療効果を定量的に判定できるようになる。

 PET検査は、体内に投与した放射性薬剤の集積を画像化する検査である。がん細胞の活動が通常の細胞に比べて活発でグルコース(ブドウ糖)代謝が盛んな性質を利用し、グルコースに似せた薬剤が集積している箇所ががん化していると判定する。この検査では、体内での放射性薬剤の分布量に基づいて、がん細胞のグルコース代謝量をSUV値として数値化する。この値を治療前後で比較すれば、現在の治療が有効か、あるいは他の治療法に切り替えるべきかを判定できるわけだ。

 ところが従来、PET画像の画質とSUV値の精度はトレードオフ関係にあった。そのため、通常はPET画像の画質を優先し、SUV値の精度は保証できないことが多かった。これは逐次近似法と呼ぶPET画像の再構成法の特性によるもの。一般的な逐次近似法では、演算を多数回繰り返して画像データとSUV値の精度を高めようとすると、画像に混ざる雑音(ノイズ)も増幅してしまう。このため、PET画像の画質を高めようとすれば、演算の繰り返し回数を減らさざるを得ず、結果としてSUV値の精度が乏しくなることが避けられなかった。

治療効果を早期に判定できるようになる

 これに対しQ.Clearでは、演算の繰り返し回数を多くしても雑音が増えないように、雑音を抑えるための演算式をアルゴリズムに組み込んだ。これによって、PET画像の画質向上とSUV値の精度向上のトレードオフを解消した。Q.Clearを使って、分子標的薬のような高価な抗がん剤の効果を治療開始後の早い時期にSUV値から判定できれば、患者側のメリットは大きい。従来のPET画像再構成法と比べて画質も約2倍に高めることができ、微小病変の描出能力にも優れるという。

 GEヘルスケアによれば、従来はSUV値をあくまでも参考値とみなす臨床医や腫瘍医が多かった。SUV値の精度が改善することで、この状況を変えられる可能性があるという。

 Q.Clearは同社のPET/CT装置の最上位機種である「Discovery PET/CT 610」と「Discovery PET/CT 710」に搭載できる。発売初年度に国内で20台の販売を目指す。