商品作りが変わるとは、具体的にはどのようなことでしょうか。

石井 タブレットではアジャイル開発方法に変えました。これまでは、企画、スペック、アプリの定義を構想当初から出荷までの(例えば数カ月から1年間といった)期間変えずに、最初に定義したとおりに品質高く作ることが最優先されていました。しかし、それは現在の外部環境のスピード感には合わないやり方です。

 現在では、候補となるアプリは商品の企画構想時にはあまり明確には詳細は定めず、3カ月前までには色々ととにかく作っていきます。途中何度も体験テストをして、さわってよければ次に進むということを2週間おきに繰り返します。これによって、最終的に“体験”としていいものだけを載せていくというスタイルです。

 例えば、Xperia Tablet Sでは手書きアプリがあります。商品出荷の1カ月半前に、設計チームがプロトタイプを持ってきました。さわったら体験がとてもよかったので急きょプリインすることになりました。当然、プロモーション用の印刷物の説明書には間に合いませんでしたが、「紙はいいから」ということで、その部分だけは商品紹介のWebの内容を置き換えることで対応しました。

小林 別の例ですが、12月にパソコン向けアプリの「Xperia Transfer」を発表しました。iTunes入りのパソコンに入れることで、電話番号、写真、音楽などのデータだけで無く、SMS(ショートメッセージサービス)のやりとりまで、すべて新しいXperiaに移行できるアプリです。

 11月くらいにそういうものを開発しているという噂を社内で聞き、非常に面白いものだったので何とか頑張って早くマーケットに出してと設計にお願いし、12月には何とそれが発表できるところまでになりました。

 これなどは、ソニーの社内のセールス・マーケティングの人間が知ったのは、マーケットでアナウンスした直前です。

 また、今回発表したXperia ZとZLにはパワーマネジメントをカスタマイズできる電源管理の非常に優れたStaminaモードが搭載されていますが、これも割と直前まではマーケティングには伝えていないものでした。それが、今回のCESでのデモ機には搭載されたというようにこれまでは考えられないスピード感でソフトが準備されました。マーケットへの提案もかなり早いタイミングで行われるので、その非常に速いスピード感の中で訴求が求められている時代です。

これから、どのように発展させようとお考えでしょうか。

石井 ソニー横串共通のマルチスクリーン向けのアプリやサービス、UXなどの上位レイヤーについては、クロスカテゴリーでやることの大方針を2年先くらいまで決めています。

小林 マーケティング側の視点としては、2012年にソニーモバイルコミュニケーションズを100%子会社化したタイミングで、セールスやマーケティングの意識改革を始めています。

新しいUXを世界中のソニーのタッチポイントで確実に体感することで提案できる、早いスピードの変化にも迅速に対応し現場でユーザーにきちんと提案できる、といった形の進化を目指しています。

 それは同時にサードパーティの方にとってもつきあうに足る、つきあうと非常に魅力的だと思ってもらえるようなセールス・マーケティングの力を備えた企業に変わっていこうというものでなければならないと思っています。