図1 商品化第1号製品である「マッシュスイッチ」
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 「エネルギーハーベスティング技術」「センサー」そして「無線通信」。これらを融合したシステム製品の開発に注力しているのが、長野県茅野市に本社を持つサイミックスだ。

 サイミックスは、元々2012年7月にセイコーエプソンの技術者らが、半導体の開発・製造、特に信号処理ICとMEMS製品の開発を軸に起業した会社である。しかし、半導体製造はコスト構造がオープンで、製品の価格が自ずと決まってしまうため、利益を出しにくかった。そこで、目をつけたのが得意のセンサーを応用したシステム製品ビジネスだ。新しい市場を開拓するビジネスであるため、立ち上がりはすべて順調という訳には行かないが、市場に製品が認知されるにつれ、売上・利益とも順調に伸びてきている。

 このシステム製品の中核に位置づけているのが、無線通信技術「EnOcean」である。ドイツのEnOcean社の技術で、蓄電池不要で無線通信を可能とすることから、どこにでも設置でき、メンテナンスフリーにできるという特徴がある。

 電力は、センサーの周りの光、熱、あるいは人の押す・回す・引くなどの動作で発生する力から取り出し、その電力だけでセンサーと無線通信が可能である。センサー数が拡大するほど大きな問題になる電池交換の手間、電池ゴミの問題もない。

 サイミックスがEnOceanに取り組み始めたのは、偶然の要素が大きい。顧客との会談の席で「EnOcean」という単語を聞き、調べてみたところ、今後のセンサーは電池や電源不要でどこにでも設置できなければならないと感じていた、サイミックス 代表取締役吉川久男氏の考えと一致した。

 日本であまり普及しておらず、取り組む企業が少なかったことも、ベンチャー企業である同社には魅力的だった。発祥の地であるドイツを中心に欧米ではEnOcean対応製品が千種百種類も製品化され、広く普及していた。しかし、日本では知名度はない一方、対抗技術はなかった。それだけにビジネスチャンスは大きいと思われた。