農業のレベルは高い

与謝野クラフトビール醸造事業のアドバイザーを務める藤原ヒロユキ氏。
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 そこで2015年1月、与謝野クラフトビール醸造事業のアドバイザーとして日本ビアジャーナリスト協会会長の藤原ヒロユキ氏を迎え、ホップの試験栽培を開始した。この時に植えたのは、米国種や英国種など計29種類である。

 ホップの栽培に関する情報は、極めて限られていた。前述の通り、日本でホップを生産している農家は大手ビールメーカーによって囲い込まれているからだ。しかし、そこは断片的な情報を手掛かりに工夫を重ねた。

 もともと、与謝野町の農業はレベルが高く、新しい挑戦に意欲的な生産者も多い。例えば、与謝野町産の「コシヒカリ」は、日本穀物検定協会の食味ランキングで最高位の「特A」を何度も取得するなど品質への評価が高く、京都や大阪の高級料亭などが使っているほどだ。

試験栽培したホップ。
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 現在は、事業の趣旨に賛同した農業生産法人や農業者から成る「京都与謝野ホップ生産者組合」を設立し、ホップの栽培や事業化に向けた活動を進めている。この組合では、商標・物流・販売促進などを共同化していくという。

 そして迎えた収穫セレモニーの日、試験栽培した29種類のうち、米国種の5種類が特に良く実った。まずは第1関門の突破だ。

 とはいえ、息つく暇はない。

 2015年9月には国内のブルワリー数社と共同で、プロトタイプとなるクラフトビールを開発する。さらに、同年10月3日から開催されるビール関連のイベント「フレッシュホップフェスト2015」に国産ホップ生産地として参加し、与謝野町産ホップを使ったビールを「世界初開栓」する予定だ。

 ここでブルワリー各社の関心を引ければ、与謝野町が目指すクラフトビールの六次産業化に向けた道筋が本格的に見えてくる。

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