前田 中国は、「世界の工場」から「市場」への位置付けに変わるでしょう。うちもかつては中国で生産し日本で販売していましたが、今度は東南アジアで作った家具を中国で販売する方向で連携を模索しています。

 ただ、中国に店舗を構えるのは、過去の事例を見てもうまく行きそうにありません。中国市場で勝負するには、これからはネット販売だとにらんでいます。カンボジアで家具を作り、中国の倉庫にストックして、ネットで販売する。この準備を水面下で進めています。

 欧米市場に向けては、ジャパン・クオリティを東南アジアで安価に製造していることを強く打ち出していきます。少し前までは上海の家具展示会に欧米人がいっぱい来ていましたが、年々減少していまして、東南アジアの展示会に流れているんですよ。シンガポールの展示会に出展する予定ですが、ジャパン・クオリティは欧米人の間でブランドイメージが強いので、「カンボジアで作っているけどしっかり品質管理していますよ」としっかりアピールして、取り引きにつなげたいと思っています。

谷川 ここで前田さんにお会いしたのも何かの縁ですよね。ネットカフェでは業務用家具の需要がすごくありますし、カンボジアでの仕事でもご一緒できそうです。まず国内市場でお付き合いさせていただけるといいかもしれません。

前田 ええ、ぜひ。一度、営業と一緒にお邪魔します(笑)。

パラシュート 社長の三反田久弥氏(写真:加藤 康)
三反田 久弥(さんたんだ・ひさや)。パラシュート 代表取締役社長。2000年に、一生付き合える仲間作りをテーマに若手経営者の会である「若手商店街」を設立。現在、北海道、関東、東海、関西、九州、沖縄の6支部があり、会員数は約400社を数える。現在、全国代表理事。他に日本介護協会常務理事やグローバルキャリア協会理事などを歴任する。(写真:加藤 康)
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リアル お二人ともカンボジアで事業展開していますが、そもそもカンボジアを選んだ理由というのは。

谷川 僕は先ほど申し上げた古本の再生ビジネスの知人がいらして、カンボジアを案内してもらって、すごく魅力的な国だなと思った。何かビジネスをやりたいと思ったときに外食産業の人と出会って、じゃあレストランをやろうと。カンボジアを狙ったわけじゃなく、たまたまた知り合いの知り合いという縁でそうなりました。

前田 私も最初からカンボジアを狙ったわけではなく、円相場が80円から100円になった2年前に、東南アジアという広いくくりで新しい工場を立ち上げるために動きました。

 ラオス、カンボジア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、タイ、シンガポール、マレーシアと全部回って、家具工場をつくるという前提で、人件費、治安、輸出入の便、人口構成などを見て、最適と思えたのがカンボジアでした。2年前に行って、半年かけて第1工場をつくりました。2年前のタイミングでカンボジアだった、ということで、もしかすると3年後にはバングラディッシュになっているかもしれない。そういう意味合いです。

三反田 現地ではカンボジアの人々を雇用しているかと思いますが、何かご苦労はありますか。

前田 技術指導をしているので、簡単に辞められてしまうと困ってしまうのですが、カンボジアの人は条件が良い方に簡単に転職するんですね。そこを食い止めるために、技術指導で日本に行ける、頑張っていれば今度は家族全員で日本へ行けるよ、というのをいつも言っています。日本での研修は非常に大きな要素になっていますね。

(この項、終わり)