インバーターやコンバーターなどの電力損失を大幅に低減できる、次世代のパワー半導体材料として注目されているのが、窒化ガリウム(GaN)です。GaNパワー素子は、どのようなアプリケーションで利用するのが効果的なのか。2015年7月3日に開催されたイベント「NE先端テクノロジーフォーラム 次世代パワー半導体のインパクト」(主催:日経エレクトロニクス)で、その答えとなるような話が出てきましたので、簡単に紹介したいと思います。

 GaNパワー素子が備える特徴のうち、特に威力を発揮するのが、高周波/高速スイッチングに向くことです。GaNパワー素子であれば、MHzオーダーの高周波スイッチングをSiよりも容易に実行できます。これにより、インダクター(トランス)を大幅に小型化できます。イベントに登壇した、島根大学 総合理工学部 准教授の山本真義氏は、GaNパワー素子の高周波特性を活用しやすい分野として、「通信・サーバー系電源」と「非接触給電」を挙げました。

 また、GaNパワー素子を手掛ける、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン インダストリアル パワーコントロール事業本部の藤原エミリオ氏は、薄型競争が加速しているディスプレーで、GaNパワー素子の高周波特性が生きるとしました。ディスプレーの薄型化とともに、薄い電源への需要が高まっているからです。MHzオーダーの高周波動作によって、小さく薄いトランスを利用可能です。

 藤原氏はこの他、音響機器でGaNパワー素子の引き合いが増えているとしました。高速スイッチングにより、ひずみが小さくなり、音質向上につながるからです。ドイツInfineon Technologies社は、米International Rectifier(IR)社を買収し、IR社のGaNパワー素子製品のポートフォーリオを手に入れました。音響機器向けのGaNパワー素子においては、IR社時代から数えて、2年以上の量産実績があるそうです。

 もう1つ紹介したいのが、2015年7月24日に開催するGaNをテーマにしたセミナーです。本セミナーでは、GaNパワー素子の講演の他、GaNの応用先として最近注目を集めている人工光合成用途の講演もあります。基調講演には、ノーベル物理学賞受賞者である、UCSB教授の中村修二氏にご登壇いただき、LEDやレーザー照明の最新動向についてご講演いただく予定です。こちらのページから詳細をご覧いただければ幸いです(紹介ページ)。