ソフトウエアに関係する技術者の中で「クラウド」、あるいは「クラウドコンピューティング」という言葉を知らないという人はいないだろう。本稿では、最近のクラウドの利用形態の変化を踏まえ、クラウドに関するトピックスを紹介する。既にクラウドを利用中という方も、復習のつもりで読んでいただければ幸いである。

 総務省の「平成26年度情報通信白書」(注1によると、既に日本国内の企業の33.1%が何らかのクラウドサービスを利用中で、今後利用を予定している企業も含めると50.6%に達するという。米国では、70.6%の企業が既にクラウドを使っている(平成25年度の調査結果より)。昨年(2014年)から、組み込み機器がインターネットにつながり、あるいは相互作用して、あるいは機器のセンサーや状態がネットワーク上にビッグデータとして蓄積され、分析、活用されるIoT(Internet of Things)というキーワードが様々な場所で喧伝され、普及が始まっている。IoTの世界では、これまで人が中心だったITの世界に実世界の“モノ”がつながり、モノが主役になる。一方、膨大な量のモノがつながる先、そして、モノから生み出される膨大なデータを格納し、分析活用に必要な膨大な計算処理を行う場所として、多くの場合クラウドが選択されることになるだろう。

 一般的なITの世界で活用される道具だったクラウドは、モノとの連携の世界においても重要な位置を占めるようになる。そしてITエンジニアにとってはモノと連携するクラウドシステムに遭遇する機会が、そして組み込み(ET:Embedded Technology)エンジニアにとっても、モノとクラウドを連携させる機会が増えていくことは間違いない。ITエンジニアもETエンジニアも、クラウドを正しく理解することがさらに重要になる。