半導体業界で業界を震撼させる大型M&Aが次々とまとまっている。テクノ大喜利では、こうした業界の形を変えるM&Aによって、半導体業界内の各社が新たに得た機会と抱えたリスクを考え、半導体業界のこれから姿を読む視点の発掘を目指した。今回の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
【質問1の回答】事業機会については、前者は非ノイマン型世界への対応、後者はスマートフォンのバリューチェーンでのポジション強化。危機は買収による組織の弱体化
2兆円と4兆円という巨額買収が、同じ業界で立て続けに発表された。業界が大きく変わろうとしていること以外の何物でもない。しかし、目的は異なる。
Intel社のAltera社買収は、進化の極限に達しつつあるノイマン型アーキテクチャの雄であるIntel社が、次の時代を開く可能性がある非ノイマン型コンピュータの核となるFPGAを内部に取り込もうとしていると考えるべきであろう。Intel社はAltera社のファウンドリを行っており、現場レベルでの交流も頻繁に行われている。互いの会社に対する理解も比較的深い。
Avago社はスマートフォン用MEMS半導体の大手であり、スマホ用アプリケーションプロセッサー(AP)の大手Broadcom社を買収したことは、スマホの高機能化によって、APと他の半導体との親和性、連携性能などがより厳しく要求されるようになったことが背景の一つとしてあるだろう。Broadcom社を取り込むことで、互いのデバイス性能を最適化し、インターフェースをブラックボックス化することで、付加価値の取り込みを図ろうとしているように見える。スマホは、特に顧客からデバイスメーカーへの低価格化圧力が強く、ベンダー側も買収によって発言力を増し、厳しいスマホのバリューチェーンの中でのポジション強化を図ろうとしているように見える。
リスクは、買収後の組織運営である。半導体メーカー、特にマイクロプロセッサーメーカーの企業買収によるトラックレコードは余り芳しくない。組織の融合に際しての不調による優秀な人材の散逸、事業機会の損失などという事態を招かないように注意すべきである。