「よし、米国に取材行って来い!」編集会議で出た指令を初めは冗談だと思っていた自分に言ってあげたい、「あなたは3週間後、米国行きの飛行機に乗っている」。まさに「一寸先は闇」だ。気が付けば企画の内容がガラリと変わり、あれよあれよという間に出張が現実になってしまった。

 前号の校了作業が終わってから2週間、しらみつぶしに現地へアポ入れするも返信が返ってくる企業はほとんどない。たまに返信がきても「前向きに検討します」、これが「拒否」の婉曲表現なのは言うまでもない。今から思えば、どこの馬の骨とも分からない日本人の取材に応じてくれる方が珍しい…。ほとんどアポが取れないまま米国へ向かう記者の頭には絶望感しかなかった。こうして1週間に渡る米国放浪取材が始まった。

 出張の主な目的は、米国ではやりの「シェアリングエコノミー」を調査すること。近年米国では、空き部屋や自家用車を使っていない時間に他人に貸し出す取り組みが盛んだ。さらに米Uber社や米Lyft社などのように、自家用車を使った個人のタクシーサービスや相乗りサービスを仲介することで急速に事業を拡大した事例も見られる。こうした企業の取り組みや自動車産業に与える影響を調査するのだ。

 ちなみに日本では、自家用車を使った個人のタクシーサービスは道路運送法で禁止された行為だ。加えて、個人の自宅に顧客を宿泊させる行為も、今のところ大目に見られている状態だが、旅館業法に抵触しかねないグレーなビジネスだ。しかし、将来日本でも規制緩和が進み、こうしたビジネスが発展する可能性がある。そうすれば、米国と同様の事例が日本でも起こることが予想される。