前回は、エレクトロニクス業界を中心に大手メーカーが一般消費者向け(BtoC)ビジネスから、企業向け(BtoB)ビジネスへと中核事業をシフトさせているという話題について考えてみました。その取り組みがすべてのメーカーで成功裏に進んでいるわけではないこと、うまくいっていないメーカーの取り組みには戦略性がないのではないかということなど課題は少なくなさそうです。

 BtoBビジネスは顧客企業の動向によって、大きく左右されます。そこでうまく立ち回るためには、BtoCビジネスと同じように、顧客に製品やサービスを売るためのマーケティングやブランディングの取り組みを新たに創造し続けなければなりません。

 前回の最後に、読者のみなさんに質問を投げ掛けてみました。それは、「御社の(BtoB)ビジネスを成立させるために何が一番重要な条件なのでしょうか」という問いです。読者のみなさんの回答はどんなものだったでしょうか。

回答のほとんどを占めたのは…

 この1年ほど、私はBtoBビジネスに関わる企業のエンジニアや企画担当者、営業担当者などに、この質問を問い続けてきました。ほとんどの人が異口同音に話した回答は、「価格が一番重要でしょう」というものでした。

 これまで私は、従来のBtoBビジネスが成立する条件として以下の四つを挙げていました。

(a)
価格
(b)
納期
(c)
仕様、性能
(c)
実績、信頼性

 BtoCビジネスとは異なり、BtoBビジネスではこういった内容が非常に重視される傾向があるからです。

 実のところ、担当者の回答は、ある程度均等な形でこの四つに分かれるのでないかと当初考えていました。しかし、結果は予想に反して、「価格が最重要」という回答がほとんどを占めたのです。

 これはどういうことでしょうか。

 これまで日本で長年に渡って機能してきたビジネスモデルでは、価格を最重要の条件にすることが最も効率的で、その考え方がずっと継承されてきたのだろう。私はほとんどの回答が「価格」になった理由を、こう考えています。

 日本のものづくりでは、「(b)納期」は守られて当たり前、「(c)仕様、性能」は満たされて当たり前、「(d)実績」があるところとだけ取り引きをしていれば安心・安全という大前提があり、その上で激しい価格競争が繰り広げられているということではないでしょうか。