6月18日のペッパー発表会。女優の樋口可南子さんから「ペッパーと孫さんのシルエットが似てる」との指摘も(写真:北山宏一)

 2015年6月18日、ソフトバンクはヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」を一般向けに20日から発売すると発表した。本体の価格は19万8000円。基本プランは月1万4800円、保険パックは月9800円をそれぞれ36カ月分支払う。孫正義社長は「できるだけ早く月1000台生産できる体制を整える」と語った。

 またソフトバンクのロボット事業を統括する「ソフトバンクロボティクスホールディングス」に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループと中国アリババ集団がそれぞれ145億円を出資する。出資比率はソフトバンク6割、鴻海とアリババがそれぞれ2割ずつになる。

 同日の発表会では、タレントや女優を交えてのトークセッションも開催された。

「ペッパーと孫さんのシルエットが似ている」

 女優の樋口可南子さんが突然、笑いを含みながらこう言うと、会場が湧いた。

 孫正義社長はガクッと膝を曲げておどけてみせ、

 「髪の毛がないところが」

 と十八番の自虐ネタを披露した後にこう言った。

 「僕がデザインも決めたから」

 つるっとした丸顔。自信満々でコミカルなキャラクター。そう言われれば似てるかもしれない。

 似ているか否かの判断は主観によるところが大きいが、孫社長はまるで自分の子どものようにペッパーの“育成”に心血を注いできた。

 2013年に米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収し、米シリコンバレーにソフトバンクの拠点を作ってから、孫社長が日本の事業に費やす時間が格段に減った。社内では孫社長の時間を確保するのが極めて難しくなっている。その最中にも聖域だったのがロボット事業だ。

 孫社長はほとんど開発リーダーである。「数が少ないから、自宅にペッパーはいないよ」と言うが、開発においては隅々までこだわりが反映されている。

「肩はあまりマッチョにならない方がいい」
「耳の突起をもう少し取り除いてみてはどうか」
「目の形はこんな曲線にしよう」

 プロジェクトを通じて、孫は開発メンバーに細かい指示を出し続けている。それを専門家が解釈して製品に反映させるのが開発の主な流れだった。

 会見で孫社長は終始、上機嫌だった。質疑応答では記者の質問に対して、孫社長が様々な事例を引き合いに出しながら答えるような熱の入れようで、予定の時間を大幅に超えた。

 孫社長はロボット事業に熱中するあまりに、ペッパーを自分に似せてしまったのかもしれない。