リアルツアーは、事業開発の現場を観察し、新規事業のリーダーから直接出会い、対話を行うプログラムです。新規事業の開発を専門に活躍されている野村総合研究所新規事業コンサルタントの石井宏治さんのコーディネートの下、さまざまな分野で事業創造の推進リーダーとして活躍する方を訪問しながら、事業成功の秘訣や取り組む際の心構えをヒアリングします。

 今回は、球場一体型のスポーツクラブやシナプソロジー(脳を活性化するプログラム)など、ユニークな発想のサービス開発を進めているスポーツ事業運営会社のルネサンスと、ポケットナイフの製造からスタートし、現在ではキッチン用や生活用から、医療用、業務用まで1万アイテム開発・販売している貝印を訪問しました。

最終報告会の様子。多喜さんから厳しい指摘が飛びます

 プログラムの最後となるグループワークでは講義とリアルツアーで得たノウハウを基に、チームでアイデア出しやビジネスコンセプトを検討、最後にプレゼンテーションを行います。この最終プレゼンテーション準備のために、自主的に集って検討を行ったり、徹夜して資料をそろえたりするグループが多く現れ、プレゼンテーション当日の参加者全員の熱気は最高潮でした。

 今回は、メーカーを中心に新規ビジネス開発に携わる企画、技術、知財担当者から国家公務員、経営者までさまざまな背景を持つ参加者が集まりました。みなさんの目的は、新しい事業開発のための技術交流、行き詰まりを感じる現在の開発に対する打開策の模索、新たに事業開発部門に配属されてこれらの活躍を期待されて派遣されたなど、今抱えているビジネスの課題を解決するため。不確実性の高まる市場環境を見据えて、リーダーシップを発揮しながら、果敢に市場開拓を推進するヒントを得たいという方が多かったように思えます。

共創を実現させるための思考法「Field Alliance」

 講義では、多喜さんが新規事業開発の勘所を伝授します。その中でも繰り返し重要だと強調していたのは共創を実現するための「Field Alliance(以下、フィールドアライアンス)」という考え方です。

 「フィールドアライアンス」とは、多喜さんが考案した「異業種で“事業の場=フィールド”を共有し、他社が侵入できないより大きな場とすることを目的とした連携スキーム」のことで、既存の商品やサービスをアライアンス企業のフィールドに展開して相互にニーズやシーズを共有することで新たな事業や商品の展開、事業機会の飛躍的な拡大を目指すことを目的としています。

 ある部品メーカーでは、コストカットと品質管理の努力によって、競争力の高い製品を作り上げ、その商品を特定業種向けに販売していました。そこに「フィールドアライアンス」の考えを持ち込み、異業種への提供を実施したところ、今までと比較して10倍の価格で販売が可能になったといいます。この事例は極端な例ですし、実際すんなりといくはずはないのですが、業種の際を越えた瞬間に価値が大きく変わる可能性があることを示唆しているのではないでしょうか。

 さらにもう1つ、重要性を強調していたのが、このような新しい可能性を模索するに当たってのルール、「Noと言わない」「責任のない開発」の2つです。