AICE運営委員長で、本田技術研究所四輪R&Dセンター室長の松浦浩海氏
AICE運営委員長で、本田技術研究所四輪R&Dセンター室長の松浦浩海氏
[画像のクリックで拡大表示]

 大手自動車メーカーが産学連携で、エンジンの高効率化と排ガス浄化技術を共同研究する━━。2014年4月にAICE(自動車用内燃機関技術研究組合)が発足して2年目に入った。AICE運営委員長で、本田技術研究所四輪R&Dセンター室長の松浦浩海氏に、日本のエンジンの開発の方向性や課題について聞いた。

問:ハイブリッド車や電気自動車など、クルマの電動化が進んでいる中、いまなぜエンジンなのか。

 クルマの電動化が進んでも、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の比率が増えるため、エンジンを搭載する新型車の比率は2040年でも世界で70%程度あると予測する。電動化を支えるモーターやインバーターの効率は、一般的に90%以上と高効率であるのに対して、エンジンは現在ようやく40%程度になった段階。エンジンの効率化を進めることで、電動車両を含めて性能を高められる。

 2040年に向けてエンジン車の比率は減少するが、世界の自動車市場は拡大する。しばらくは新興国を中心にエンジン車の台数は拡大していく。自動車メーカーは将来に渡って、エンジンの高効率化を進める必要があり、その性能が世界での競争力となる。

問:エンジンは、自動車メーカーごとのコア技術だ。門外不出としてきたノウハウや課題を共有することに抵抗はないのか。

 自動車メーカーにとって市場はグローバルだ。エンジンはガソリンやディーゼル、燃料もバイオ燃料などへと選択肢が広がっている。さらに世界各地の燃費規制や環境規制に対応するために、個社の対応では手に負えない状況になっている。自動車技術会などで各社のエンジン担当者に情報共有を呼びかけてきた。それでもAICE設立には5年かかった。
 
 AICEでは、エンジンの技術開発を基礎・応用の共通領域と競争領域に分けて、共通領域を共同で取り組み、その成果を各社が持ち帰って効率的に開発できるようにする。

問:欧州では産学連携が進んでいる。

 既に欧州では、大手自動車メーカーや大学が加盟するFFVという同様の組織があり、成果を上げている。50年以上の歴史があり、共通領域のテーマが200ぐらいはある。しかも、欧州の大学には自動車メーカーにあるような研究設備があるところも多い。

 欧州の取り組みを参考にはするが、そのままではうまくいかないだろう。日本ならではの産学連携の姿を模索する必要がある。(後編に続く)