最近話題の「ハードウエアスタートアップ」。ですが、その実態はなかなか見えてきません。そこで、視線追跡型VRヘッドセットを手掛けるFOVEを立ち上げ、製品開発のまっただ中にいる同社 代表取締役社長の小島由香氏に、実体験を通じて得たハードウエアスタートアップの実態やそれらを取り巻く環境を漫画と文章で紹介してもらいます!

(作画:小島由香)
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起業は他人事ではありません!

 私は、いわゆる「起業家(アントレプレナー)」。でも本当は、ずっと漫画家になりたかった。スタートアップという言葉も知らなかったし、仕事も取り立ててできる方ではなかった。なのに!、だ。

 というわけで皆さん、起業は他人事ではありません。それはある日突然隕石のようにふってきて、地響きを立てて人生を変えてしまう。たった1年で。

 小学生の時から漫画が好きだった。教室では自作の漫画ノートに顔を埋め、ベランダの隅っこで同人誌を回し読みし、イベントではコスプレに励む。大学に入ってから漫画の投稿をはじめ、商業漫画誌で担当編集者がついたこともある。一日中部屋にこもって漫画を描いていたので、人の目を見ることが苦手だった。

 そんな私、小島由香は今、FOVE(フォーブ) 代表取締役社長としてサンフランシスコで会社を経営している。視線追跡型VRヘッドセット「FOVE」を開発中で、2015年5月から「Kickstarter」で先行予約中だ。

 自分で言うのもなんだが、ここまで書いてみて冗談みたいだと思う。

 スタートアップは何が起こるかわからない。起業してからというもの、予測不可能なトラブルの連続、数桁ほどアップデートされる金銭感覚、急激に拡大する人脈、パンクするメールボックス、1日のうちに人生最高の気分と人生どん底の気分を振り子のように何度も味わう…。アドレナリンの蛇口がぶっ壊れて、気をぬくとトンでしまいそうな1年だった。