B級と言うと、B級グルメが思い出されるだろう。B級グルメとは、ぜいたくでなく、安くて、庶民的でありながら、おいしいと評価される料理だ。それとは対照的なのが、A級とは呼ばないが、ぜいたくで庶民にはなかなか手の届かないおいしい高級料理だ。そして、国や企業の成長に欠かせないイノベーションについても、B級があると言ったらみなさんはどう思われるだろうか。今回は、B級グルメを糸口に、B級イノベーションについて考えていきたい。

B級グルメ

 B級グルメは、1985年、1986年ころから使われるようになっている用語・概念だ。だが、そのような料理は昔も存在していた。一般に、B級グルメには以下のような特徴がある。
(1)ローカルの食材、気候、地理、文化に合う
(2)おいしい
(3)シンプル、安い

 昔から存在していたB級グルメのような料理とは、カツ丼、たこ焼き、お好み焼き、各種のラーメンなどだ。既に国民食として定着しているのでローカル色は薄いが、安くておいしいという観点からはB級グルメと言っていいのではないかと思う。もっとも、B級グルメといって、やはりしっくりと来るのは、ご当地グルメだ。よく知られているものとしては、例えば、浜松餃子、宇都宮餃子、佐世保バーガーなどが挙げられる。もちろん、まだよく知られていないご当地グルメはたくさんある。これらは多くの場合、「まち興し」の一環として開拓されPRされている。

 浜松餃子については、以前もこのコラムでは取り上げている(「オートバイと餃子の「出合い」」参照)。その特徴は、キャベツと豚肉からなる具と、皿の真ん中に盛られた付け合わせのゆでもやしだ。餃子の中には、キャベツの持つ甘みやあっさり感、豚肉のコクが凝縮されており、付け合わせの太くて水分の多いゆでもやしが脂っぽい餃子のよい口直しになる。このバランス感は、伝統的な和食とも共通だろう。