宇宙航空研究開発機構(JAXA)と宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)は2015年3月8日、宇宙太陽光発電の基礎となる、無線送受電システムの実験を兵庫県の三菱電機試験場で実施し報道公開した。宇宙太陽光発電とは、宇宙空間で太陽電池を利用して発電した電力を地上にマイクロ波で伝送しようというもの。そのためには、マイクロ波の放射方向を正確に制御しなくてはならない。また、太陽光の当たる面と当たらない面とで摂氏100度以上の温度差が生じる宇宙空間では、アンテナの熱ひずみによる送電効率の低下を防ぐ必要がある。これまで、地上での無線送電実験では、送電にパラボラアンテナを使っていたが、パラボラでは熱ひずみの補正が難しかった。

 JAXA/J-spacesystemsは、今回世界で初めて送電と受電の両方に小さなアンテナ素子を平面に並べたフェーズド・アレイ方式のアンテナを使用した。受電側から送信したガイド用の信号を使って送電側が正確な方向に電力をマイクロ波の形で送り返す形式を採用した。また、4枚のパネルで構成される送電側アンテナの各パネルの取り付け位置をわざとずらして、熱ひずみが発生した状態を再現し、アンテナに給電するマイクロ波の位相を制御して、熱ひずみがあっても送電効率の低下を防げることを確認した。

距離55mで、340Wを送電

 実験では、送信アンテナと受信アンテナを約55mの間隔で向かい合わせ、5.8GHzのマイクロ波を使って電力を伝送した(図1)。送電側を駆動する電力は、通常の200V三相交流。受電側は50V直流を発生させる。今回の公開では、50V直流から、インバーターを通して通常の家庭で使用する100V交流を作り、この電力でアマチュア無線機器による交信を行うデモンストレーションを実施した(図2)。

図1●実験装置の概要
画像:JAXA
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図2●無線送電された電力で交信を行うデモンストレーション
当日はアマチュア無線団体がデモを実施した。
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