発光効率の向上とコストダウンが急速に進むLED照明。特に、この数年は東日本大震災をキッカケにした消費者の省エネ意識の向上や、昨年のノーベル物理学賞受賞などを背景に、普及に拍車がかかっている。

 そうした中、市場拡大になかなか進まない次世代照明がある。有機EL照明だ。LED照明に比べて「目に優しく、軽くて薄い」。この触れ込みでLED照明との違いを強調してきたものの、認知度はなかなか高まらない。

 世界的な普及の正のスパイラルに入ったLED照明は、照明機器にも部材にも数多くのプレーヤーが参入した。人材・資金のリソースが業界全体で大規模に投下されたことで、さまざまな技術的な課題が解決され、有機EL照明の得意分野だった「軽くて薄い」を打ち出す商品も登場している。

デザインの自由度高く、目に優しい有機EL照明

 それでも有機EL照明には、まだ利点がある。まず、フレキシブル性。曲げやすい有機ELはデザインの自由度が高く、パネルを曲げてもムラのない均一な面発光を保ちやすい。そして、目に優しいという点である。LED照明では、ブルーライト(青色光)による目への影響が問題提起されている。その影響が少ないと言われる有機EL照明の大きな課題は価格。それを乗り越えることが、フレキシブルで目に優しいという利点を生かした本格的な市場形成につながることになる。

 有機EL照明は、LED照明と同じように普及の正のスパイラルに入ることができるか。業界では、本格普及の時期が2017~2018年になるとの見方が強い。現在、関連企業はその目標に向けて投資を続けている状況だ。その甲斐もあって、有機EL照明は着実に性能が向上し、製品群が増えている。

電球ソケットに装着して利用できる三菱電機の有機EL照明(写真:グラナージュ)
[画像のクリックで拡大表示]

 ここにきて、有機EL照明では、待望の機能を備える製品も登場した。既存照明からの置き換えを容易にする製品だ。

 例えば、三菱電機は電球ソケットに取り付けられる有機EL照明を開発した。これまで有機EL照明は器具一体型が多く、既存照明から移行するハードルが高かった。既存の電球ソケットを利用できれば、移行の障壁はグッと下がる。しかし、価格面で折り合いがつかず、まだ商品化には至っていない。早期の発売に期待したいところだ。

 有機EL照明をもっと手軽に――。有機EL照明を手掛ける企業による取り組みの目下の目標は、この点にある。従来の企業向けから一歩進み、一般の個人でも購入できる機会を増やすことが、2015年の特徴的な取り組みになっている。