まずは、最近当社が発表した2014年の半導体売上高ランキングトップ10をご覧いただきたい(表1)。トップ10の順位に例年との大きな違いはない。韓国SK Hynix社と米Micron Technology社の順位が入れ替わったこと、台湾MediaTek社が同業の台湾MStar社を買収してトップ10入りしたこと、くらいだ。

2014年の半導体売上高トップ10(出典:IHS)
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 トップ10に入った日本企業は東芝(7位)のみ。トップ20を見てもルネサス エレクトロニクスが11位、ソニーが17位にランクインした程度で、日本メーカーの合計シェアは11.6%にとどまる。さかのぼること20年、1995年当時はトップ10に5社がランクインし、トップ20には10社がランクイン。世界シェアの実に40%強を日本メーカーが占めていた。この20年の凋落ぶりは鮮明だ。

 日本の半導体メーカーの最近の状況を見ても、残念ながら復活とか巻き返しを期待できるような明るい材料には乏しい。むしろ依然として、追加リストラや本社からの連結外しといった、気が重くなる話題に事欠かない。本コラムで繰り返し述べていることだが、リストラを繰り返す企業の多くは自社の強みを見失っており、それが負の連鎖を引き起こす。悪い点ばかりに目を奪われ、全社にネガティブな思考が広がって社員のモチベーションを低下させてしまうのだ。

 「選手の悪いところはすぐ目につくが、良いところは探さないと見つけにくい。それを探してほめてあげることも指揮官の務めだ」――。スポーツの名将たちのコメントを集めた書籍に、こんな言葉がある。これは、企業経営にも当てはまる。自社の良いところ、強みとは何かを改めて探すことで、経営戦略を見つめ直すことが重要だ。そうすることで社員一人一人のモチベーション向上にもつながり、経営者自身にとっても新たな視点を持つことにつながる。

 日々ルーチンワークに忙殺され、経営戦略を見つめ直す時間がなかなか取れない。そんな実態もあるだろう。だがそれを自らに許すことは現実逃避であり、負の連鎖に陥った企業の経営者にこそよく見られる傾向ではないか。負の連鎖を断ち切るには、「良いところ探し」に時間を費やす経営者の努力が欠かせない。ヒト、モノ、カネといった社内のリソースには当然ながら限りがある。だからこそ、それらを最大限に活用するための「良いところ探し」が指揮官の務めであるはずだ。