三反田久弥氏が運営する会員制コミュニティー「Settenn」。月額1万円の会費で、会員企業の人と人をつなぐサービスを提供している。このコラムでは、同氏をハブに集う300社を超える会員企業の中から、商品やサービス、技術で新機軸を打ち出す企業経営者をゲストに迎え、企業経営に懸ける思いや新しい事業を構築する際の考え方などを聞いていく。
 今回のゲストは、いずれもものづくり企業。ユニフォームを軸にした提案型の事業を展開するソーイングボックス 専務取締役の菅沼蔵人氏と、雑貨全般を取り扱っている東京国際貿易 取締役の大橋和克氏である。菅沼氏と大橋氏ともに海外拠点を上手に活用しながら、新しい提案で顧客を拡大し続けている。成熟した社会や製品であっても、まだまだやれることがたくさんあることを知っている若手経営者の思いとは。

三反田 今回登場いただく菅沼さんと大橋さんは競合が多い業種にありながら、大手企業に選ばれる存在であり、しかも海外に拠点を持って、きちんと経営しています。

 今後、海外の工場活用を検討したり、実際に海外に進出したりする企業にとって障壁となる様々なことについてリアルに語ってもらえるはずです。まずはそれぞれが手掛けている仕事について話してもらえませんか。

(写真:加藤 康)

菅沼 私は、繊維に特化した創業約70年の菅沼縫製所グループという会社の創業3代目です。現在はグループ体制で、大手ブランドのOEMと、メーカーのOEM、そして自社製品の製造・販売という三つの事業体に分かれています。

 このうち、私は自社製品として、オーダーメードのユニフォーム関連を手掛けるソーイングボックスという会社の経営に携わっています。

 そもそもの経緯を話しますと、菅沼縫製所はパンツの工場から始まり、大量生産の時代にメーカーのOEMだけではなく、大手ブランド向けのOEMを始めました。もう40年近く続けています。

 ご存じのように近年、縫製業界では生産拠点が海外に移っていますが、菅沼縫製所グループは国内生産に集中する選択をして何とか事業を続けてきました。

 特に大手ブランドとの長い付き合いの中で、企画の立案をはじめ、デザインの良しあしを比較できる能力などが培われてきました。ソーイングボックスは、この長所を生かしてユニフォーム関連の企画を手掛ける会社として立ち上げました。

菅沼蔵人(すがぬま・くらと)。株式会社ソーイングボックス 専務取締役。早稲田大学在学中より医療系コンサルティング会社にのべ12年勤務。在職中は病院・介護施設・一般企業・行政機関に対して戦略立案から利益改善、組織設計、新規事業マーケティング、M&A支援、行政計画策定支援など200件以上のコンサルティングプロジェクトに参画した。2012年、祖父の代より続く縫製業に転じ、医療・介護向けユニフォーム事業の拡大に尽力。顧客ニーズを具現化するオーダーメイドユニフォーム事業を軸に現在は病院・介護施設に加えて飲食店や販売店など、ワークウェア事業全般を手がける。(写真:加藤 康)

 また、菅沼縫製所グループは、国内を海外化しているのが特徴です。現在、スタッフの5~6割は外国人で、のべ7カ国くらいが働いています。ここが業界の中では非常に珍しいと思います。

 実は、国内の海外化は20年近く前に始めており、この取り組みが、次の海外拠点を探すきっかけにつながっているのです。我々は卒業生と呼んでいますが、うちの会社で働いたメンバーが自国に戻って、ほかのメンバーと一緒に仕事をしている例が少なくありません。

 例えば、ベトナムには卒業生が経営する会社があります。この20年でベトナム出身などの卒業生が250~300人になっていて、そのメンバーたちで会社を立ち上げました。卒業生による人的ネットワークが海外にできることが、次のビジネスを生んでいくと思っています。単なるものづくりだけではなく、人と交流しながら、いろいろなビジネスを考えていけると思っています。

三反田 菅沼さんは服飾関係ですが、大橋さんは何をやっているのか、ぜひ説明してください。