連載趣旨
田中義和氏
トヨタ自動車
製品企画本部ZF主査
(燃料電池車「MIRAI」の開発責任者)

 世界で初めて量産型の燃料電池車(FCV)を発売したトヨタ自動車は、FCVを「究極のエコカー」(同社代表取締役副社長の加藤光久氏)と断言する。トヨタのFCVに対する力の入れようは突出しており、2015年1月にはFCVに関連する特許約5680件の実施権を無償提供すると発表した(関連記事)。

 一方で、ライバルと見られる電気自動車(EV)も相次いで発売されている。ドイツBMW社は「i3」、ドイツのVolkswagen社は主力車種「Golf」のEV版を発売。EVベンチャーの米Tesla Motors社も高級セダンをヒットさせ、2015年にはSUV(多目的スポーツ車)を投入する予定だ。米General Motors社は、EVとして80kmの航続距離を持つプラグインハイブリッド車(PHEV)の新型「Chevrolet Volt」を2015年1月上旬に発表した。

 FCVの優位性とは何か? ライバルのEVを凌駕できるのか? 「MIRAI」という大胆でチャレンジングな車名はいかにして決まったのか? そしてFCVの開発を成功に導いたマネジメントとは? 開発責任者の田中義和氏へのインタビューを通して、MIRAIの特徴と価値、開発の狙いや苦労などを浮き彫りにする。

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トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」
燃料電池は車体中央の床下に搭載している。モーターの出力は113kW。航続距離は約650km。車体寸法は長さ4890×幅1815×高さ1535mmで車両重量は1850kg。4人乗り。価格は723万6000円。国から補助金を考慮すれば約520万円(税込み)で購入できる。