開発の話をしていて、嫌な気持ちになる時は決まっている。数字の話になる時だ。「それはいくらくらいの売り上げになるのか?」「それで一体、いくらもうかるのか?」。

 虫唾(むしず)が走ると言うが、まさに私は胸がムカムカして不快になる。それはそうだろう、一生懸命に開発してさあこれからという時に、やってみないと分らないのに、数字を示せとは何事か。

 なのに、あらかじめ数字が見えないとやってはいけないと言う。ならば、勝手に都合のよい数字をつくればそれでよいのか、でっち上げでよいのか、私は不快になるのである。

 先日も、「100億円の売り上げが見込めないのなら、この事業はダメですよ」と、したり顔で言う人を見て、一体、開発の目的は何なのか、聞いてみたくなった。

 開発の目的は、お客様が「いいね」あるいは「うれしい」と言ってくれるようなサービスや商品を提供することである。そして、その結果、提供する者もうれしくなることである。

 これを、お客様に「うちは100億円売って、10億円儲けたいのでよろしくお願いします」と言ったらどうなるのだろう。お客様は「そんなことはお前の勝手だ。それより、しっかりとうれしいものを提供してくれ」と言うに決まっている。

 このように、最近気になるのは、数字を先に言う人が多いということだ。何をするにも数字で考えるのだ。売り上げ目標、利益率、成長率、前年比成長率、そんな数字を並べた挙句、都合のよい数字になるとそれでよし。冗談じゃない、数字を先行させて開発がうまくいくなら世話はない。