都市近郊の鉄道の多くは電化されており、架線からパンタグラフ経由で電気を得てモーターを回す電車が走っている。しかし国内には架線のない非電化区間も多く、現在ではディーゼルカーを走らせていることが多い。しかし、ディーゼルカーは回生ブレーキが使えないので燃費が悪い、騒音が大きい、排ガスが出る、免許や整備工場を電車と別に準備する必要があるなど、多くの問題を抱えている。

 そこで開発が進んでいる車両が、ディーゼルエンジンとモーターのハイブリッド車両(ディーゼルハイブリッド車)やバッテリー電車だ。ディーゼルハイブリッド車は、ディーゼルエンジンで発電した電力を2次電池に蓄え、それをモーターに送って走る。クルマのシリーズハイブリッド車と同じ考え方だ。

 一方のバッテリー電車は、パンタグラフから集電した電力で電化区間を走りながら2次電池に電力を蓄え、非電化区間では蓄えた電力を使って走る(図1、「日経ものづくり」関連記事)。非電化区間が長く、クルマに例えれば「走行中に給電できる電気自動車」に近い。クルマでは停車中の非接触給電を開発している段階で走行中給電は夢のまた夢だから、鉄道はかなり先を行くことになる。ただし非接触ではない。鉄道には架線というインフラがあるおかげで可能になった。

図1●JR東日本「EV-E301」
2両を合計した質量は80t、定員は265人、座席定員は99人。