師走のこの時期になると、毎年私はこのコラムで、「私の住む中国や、EMS(電子機器受託製造サービス)・ODM(Original Design Manufacturer)大手の多くが本社を置く台湾では正月を旧暦で祝うため、日本でお屠蘇気分が抜けるころになってから年の瀬の雰囲気が盛り上がってくる云々」ということを書いている。気分や雰囲気の盛り上がりはさておき、いささか困るのは、中国や台湾のメディアやアナリストらによる新年の展望といったような観測や記事も、春節(旧正月)が到来する1月下旬から2月下旬にならないと、本格的なものが出てこないということ。中国や台湾の専門家らの話が出揃うのを2月ごろまで待ち、それらをまとめて、「今年の展望」として記事を書いても、日本のビジネスパーソンにはどうしても「なんだ今ごろになって遅いな」という印象を持たれてしまうのが辛いところだ。

 それでも米Apple社が2015年に投入する、または出すであろう製品の観測やうわさについては、比較的まとまったものが出ている。Apple社の新製品で最大の注目を集めるのは例年、スマートフォン「iPhone」の新モデルであり、製造側ではiPhoneの受注比率が最も高い台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕に関心が集中する。

 ところが2015年は久々にiPhoneやフォックスコン以外の製品や企業がスポットライトを浴びることになりそうだ。Apple社が2015年の発売を公言しているスマートウオッチの「Apple Watch」と、この端末の製造を受注したと見られている台湾Quanta Computer社(広達電脳)である。

Quanta Computer社が製造を独占したと見られる「Apple Watch」
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 Quanta Computer社はノートパソコン(PC)の受託製造では2010~2013年まで4年連続で世界最大手。2014年も最大手の座を守った模様だが、スマートフォンやタブレットPC台頭のあおりを受け市場が縮小していることから、出荷台数はピークだった2011年の5600万台から4000万台強にまで減少したものと見られる。