柳瀬 ええ。夜中にこっそり荷物をまとめて。

リアル 書き置きくらいは。

柳瀬 いいえ。していません。本当にガチで家出しました。朝起きたら、僕がいないという(笑)。

リアル 東京に出てきてどうしたんですか。

柳瀬光太郎(やなせ・こうたろう)。ENDingINNOVATION(エンディングイノベーション) 代表取締役社長。福岡大学在学中に野田税務会計事務所に勤務。1997年6月、ジェイワンに入社。1999年12月よりコナミで財務関連の業務に携わる。2003年8月からアクセンチュアで戦略コンサルタントを務め、その後、「眼鏡市場」を運営するメガネトップや、テイクアンドギヴ・ニーズで社長室長などを歴任。2007年11月から結婚関連情報ポータルサイトを運営する「結婚準備室」の代表取締役を務め、黒字転換を果たす。2011年4月よりENDingINNOVATIONの創業準備を始め、お墓マーケット全般に係る総合的サービスを提供すべく、起業。現在に至る。(写真:加藤 康)
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柳瀬 15~16年くらいはいろいろな仕事をやりました。2011年に東日本大震災が起きた直後に起業の準備を始めたんです。そのときに、若い時にケツをまくって飛び出した家業と同じ、供養を仕事にしたいと思いました。

 でも、供養業界はさまざまな仕事があります。当然のことながら、どの分野も先発組の会社がたくさんあるわけです。そこで最初に立ち上げようと思ったサービスが、墓掃除の代行業でした。

 実は、僕は10年前、30歳のときに病気で妻を亡くしています。2年前に再婚して娘も授かりましたが、前妻の眠るお墓には片道2時間かけて2カ月に1回くらいの頻度で足を運んでいるのです。僕くらいの年代だと普通、墓に入っているのは祖父母、一番近くても両親のどちらか、という感じですよね。恐らく、墓参りは年に1~2回という人が多いと思うんです。でも、ある意味、親兄弟よりも近い配偶者が眠るお墓は意味合いが違ってくるんですね。

 僕は特に宗教心が厚いわけではないですし、墓石屋の息子ということもあまり理由にはなっていません。理屈は関係なく、とにかく墓参りに行ってしまう。妻や夫に先立たれて、同じように感じる人は多いと思うんです。でも、僕のような年代ならばいいですけれど、60代、70代で同じ境遇に置かれた人は、身体的、時間的、いろいろな理由で目の前に墓地があっても行けない人はたくさんいるのだろうと。もし、時間があっても行けなかったら、本当にストレスがたまるに違いありません。そう思って、まずは高齢者向けの墓掃除の代行サービスを立ち上げたんです。

リアル なるほど。でも、似たようなサービスは、他にもありそうですね。

柳瀬 ええ。僕ごときが発想できるのなら、当然、先人はいたわけです。ただ、「何でもやります」という便利屋さんがほとんどでした。庭掃除や廃品回収などと並列で墓掃除を代行するという。アルバイトの学生さんなどに掃除をさせるような感じですね。

 そこで僕の会社では、まず「墓のプロ」が掃除をするネットワークづくりを始めました。墓のプロとは誰か。当然のことながら、プロ中のプロは石材店ですよね。実家がそうですから、よく分かります。石材店が掃除すると、誰よりもキレイにできる。そこで、ある程度の石材店ネットワークができた2011年11月に会社を立ち上げました。今では全国の石材店、約900社をネットワーク化しています。

リアル へぇ~。ひょんなことからビジネスは生まれるもんですね。

三反田 結城さんは、どんな経緯で今の事業を始めたんでしたっけ。