先日、某大手電機メーカーのヘルスケア社 社長、そして日経デジタルヘルスのインタビュー記事でも最近取り上げた医師でミナケア社長の山本氏と鼎談をさせていただく機会がありました。

 この鼎談のテーマは「ヘルスケアのイノベーション」。お二方との事前打ち合わせの中で、ヘルスケアのイノベーションを端的に共有できるコンセプトとして、「ソーシャルホスピタル」の実現に向けたイノベーションを軸に議論を進めることになりました。

 ソーシャルホスピタルは、日経デジタルヘルスが提唱する、医療の未来像に関するコンセプト。すなわち、「医療は病院が担うもの」という常識は近い将来、過去のものになり、社会を構成するあらゆる要素が医療を担う“場”になる時代が到来する、というものです。例えば、家や商業施設などの生活空間、自動車などの移動空間、そして個人のカラダそのものが医療の中心地となるというわけです。別の表現で言い換えるならば、社会の中の全員が医療の参加者になるという話でもあります。

 それを前提に、鼎談内で取り上げるテーマを前述の事前打ち合わせの中で話し合いました。その結果、出てきたキーワードの一つが「薬局」でした。実は、事前打ち合わせ用のたたき台として筆者が用意した資料には入れていなかったキーワードなのですが、打ち合わせの中で「ぜひ入れよう!」という流れになったのです。薬局が今後の医療・ヘルスケアにおける重要な担い手であるとの思いを共有したからです。

 薬局は、病院という箱の外で、消費者(患者)と密接なコンタクトポイントを持っています。国内では、コンビニエンスストアよりも店舗数が多いことは、そのコンタクトポイントの多さを示す比較材料としてよく取り上げられています。まさに、社会(ソーシャル)の中で、身近な存在であるわけです。

 この薬局こそが、今後の喫緊の構築が求められている地域包括ケアシステムの中で、“健康管理ステーション”の役割を担うべきとの見方が多くなってきています。いわゆる「門前薬局」という姿から抜け出し、新たな薬局、いわゆる「次世代薬局」へと変化していくことが求められているのです。起業家医師で薬剤師でもある狭間研至氏(ファルメディコ 代表取締役社長、日本在宅薬学会 理事長、薬剤師あゆみの会 理事長)が2014年7月に発行した著書『薬局が変われば地域医療が変わる』にも、今後の医療において薬局の変化が必要であることがつづられています。

 こうした動きを踏まえ、産業界側からも次世代薬局における事業機会を探る取り組みが活発になってきました。例えば、ウエアラブル端末や健康管理プラットフォームのエコシステムに薬局を巻き込んだ新たなサービスの構築。そして、1滴の血液などから簡易にセルフチェックができる、いわゆるPOCT(point of care testing)技術を薬局向けに提案していこうという動きも目立ち始めました。さらに、電子お薬手帳の分野にはソニーやパナソニックといった新規参入企業を含め、かなり数の提案が出てきています。

 日経デジタルヘルスでは今後、こうした次世代薬局に関する動向や取り組みの情報発信を、さらに強化して進めていく考えです。第1弾として、2014年12月2日に「次世代薬局サミット2014 ~地域包括ケア時代の“健康管理ステーション”へ~」と題したセミナーを開催します。次世代薬局を構成するさまざまなプレーヤーを講師として招き、将来の薬局像や産業界にとっての今後のビジネス機会を探ります。本セミナーを含めた今後の情報発信にぜひ、ご注目ください。