吉川真・JAXA宇宙科学研究所准教授インタビューでは、はやぶさ2立ち上げに当たって、関係者がボトムアップと事前の説明責任を重く見る理学側研究者からの反対意見に大変苦慮したことが語られた。

 では、理学の研究者側から、はやぶさ2はどのように見えたのだろうか。渡邊誠一郎・名古屋大学大学院教授は、企画段階できびしくはやぶさ2の問題点を指摘していたが、探査機開発が本格化した2012年10月に、はやぶさ2計画の理学側トップであるプロジェクト・サイエンティストに就任した(図1)。その渡邊教授に、惑星科学の側からみたはやぶさ2についてお聞きした。

図1●渡邊誠一郎・名古屋大学大学院教授
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惑星科学は、分野を横断する総合科学である

――私はずっと初代はやぶさからウオッチしてきて、はやぶさ2がなかなか前に進めなかったのを歯がゆい思いで見てきました。その中で惑星科学関係者の集まる学会である日本惑星科学会が、なかなかまとまらないのを不思議に思っていました。おそらくは外からウオッチするのと、当事者として内側から関わるのとでは見え方も感じ方も違っているのだろうと思います。そのあたり、科学者の視点でどう見えて、どう行動したかをお聞きできればと思います。

渡邊 確かに、外部からの見え方と内側からの見え方は、かなり違ったかも知れません。外からはトラブルがあったかに見えたかもしれませんが、内側にいた私自身の印象はそうではなく、必要な議論が適切なタイミングで起こり、その結果として現状に至ったというものです。  私がはやぶさ2に関係したのは、2010年以降です。2010年から2012年にかけて、私は日本惑星科学会の会長を務めました。そのため、はやぶさ2のための研究者の議論の場を設けるといった仕事をして、その流れではやぶさ2に関わることになりました。