2014年4月に日本で発売されたBMW社の電気自動車「i3」は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製の骨格を採用した世界初の量産車としても注目を集めました(図1)。CFRP骨格を中心として軽量化技術により、通常の構造の車体と比べて実に350kgも軽く仕上げることができたといいます。

図1◎上部の骨格にCFRPを採用したBMW社の「i3」。下部のシャシーはアルミ合金製。
図1◎上部の骨格にCFRPを採用したBMW社の「i3」
下部のシャシーはアルミ合金製。
[画像のクリックで拡大表示]

 i3は、炭素繊維メーカーや自動車メーカーの間で最大級の注目を集めていますが、それに劣らず熱い期待が寄せられている技術があります。国家プロジェクト「革新炭素繊維基盤技術開発」が取り組んでいる炭素繊維の新しい製法です(詳しくは、『日経ものづくり』10月号の特集「鉄並みに安くなる炭素繊維」で紹介します)。

 同プロジェクトは、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維に代わる新原料を見いだし、それに対応する低コストの新製造工程を提案しています。その目標は、生産性10倍、製造時の消費電力が1/2以下で、クルマなどに使える性能を備えた炭素繊維を量産すること。統括責任者の東京大学大学院工学系研究科教授の影山和郎氏、プロジェクトリーダーの産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門(総括研究主幹)の羽鳥浩章氏のもと、東レ、帝人(東邦テナックス)、三菱レイヨンなど炭素繊維メーカー3社が参加しています。