2014年9月17日、ソニーがMC(Mobile Communication)分野の営業権1800億円の減損処理と、それに伴う会社計画利益の下方修正(営業利益1400億円→-400億円、当期利益-500億円→-2300億円)、および今期配当予想の修正(前期25円→今期無配)を発表した(関連記事1同2)。

 同社はMC分野について、事業環境の変化、従来計画と実績のかい離などを考慮し、2014年7月から中期計画の見直しに着手した。新中期計画においては、事業環境の変化を鑑み収益見通しを修正(来期以降継続的に営業利益を計上するが従来比で低水準、将来キャッシュフロー見通し減少)し、MC事業の公正価値も減少したため、同事業の営業権全額1800億円の減損処理を決めた。なお、2014年4~6月期末時点で883億円を計上している固定資産については、減損処理の必要なしと判断した。新中計では、ハイエンド重視、高収益国・地域への集中を主眼に、規模を追わず収益重視の戦略に変更している。

 減損処理は筆者の想定範囲内でサプライズなしだが、新計画は新味や説得力に欠け、さらなる収益低迷リスクや固定資産の減損リスクを感じる。金融市場に参加していないエレクトロニクス業界の読者にとっては、今回の減損処理発表は唐突に感じられるかもしれない。しかし、今回の措置は「なるべくしてなった」ところが大きいと筆者は感じている。新しい中期計画や事業戦略については、詳細な開示がなされなかったため、その評価や分析はまた別の機会に行いたい。

 ここでは、筆者がドイツ証券で2014年8月25日に発表したソニーに関するレポートから、MC関連事業の減損処理リスク、今後の事業立案の難しさ、本社のあり方の再考などについて詳述した部分を抜粋して掲載したい。