約半年にわたって続けてきた本連載ですが、今回が最終回となります。これまで通り事例を紹介した後、最終回に際しての結びを述べたいと思います。今回のテーマは「技術の蓄積」です。

◆失敗事例研究:
トップダウンで技術の蓄積を進めているが活用度が低い
[部品メーカーA社]

 目先の業務に追われて、技術の蓄積にそもそも取り組めていない企業が数多くあります。しかし、このような状況の解決については、以前の回で述べてきました。今回紹介するのは、技術蓄積の取り組みを行っているにも関わらず、思うような成果を獲得できなかった事例です。

 A社は売上高数千億円規模の部品メーカーです。同社は技術の蓄積を重要視しており、研修や展示会の出席を奨励するとともに、出席者には技術レポートの提出を義務付けています。具体例を挙げると、研修や展示会など海外での催しに1週間参加することに対しては、あまり厳しく目的や効果を問われることなく了承が得られます。また、技術レポートの提出については、目標管理制度において、この技術レポートの提出数や出張報告書の提出率が指標となっており、蓄積されたレポート数は着実に増加しています。しかし、このレポートがあまり活用されていないのが現状です。