「ファインバブル」と呼ばれる微細な気泡を活用した製品やサービスを、世界に通用する産業に育てようという機運が高まっている。中心的な役割を担うのは、2012年に設立された「ファインバブル産業会」(FBIA)だ。会員には、IDEC、キユーピー、キリン、資生堂、島津製作所、シャープ、西日本高速道路、パナソニック、堀場製作所、三菱重工業、メニコン、ヤマト科学、産業技術総合研究所、慶応義塾大学などの業種を超えた多彩な顔ぶれがそろう。

 これまで独自に事業を展開していた各社が一致団結した。その目的は、ファインバブルの「怪しい印象」を払拭し、市場の信頼を勝ち取ることだ。業界の枠を取り払い、自由に意見を交換できる場の構築が市場拡大につながる。FBIA副会長の山田洋一氏は、そう考えている。(リアル開発会議)
山田洋一氏。ファインバブル産業会 副会長、島津製作所 分析計測事業部 試験機ビジネスユニット長(写真:山本尚侍)

 ファインバブルは、液体や固体の中に存在しているマイクロ/ナノメートルサイズの微細な気泡である。洗浄効果の向上、食品の食感・機能の改善、半導体製造プロセスの効率化といった幅広い効能を持つことから、近年関心が高まっている。最近では、農作物や養殖魚の成長促進に利用する事例も出てきた。世界で実用化が最も進んでいる国は日本だ。

 ただ、技術的なポテンシャルの高さと、応用の広さとは裏腹に、ファインバブル・ビジネスは、これまで洋々としたものではなかった。「産業」と呼べるほどの市場規模にはなっていない。ポツポツと活用事例は出てくるものの、そこから横に広がっていかないのだ。ファインバブル事業を手掛けてきた企業は、「良い技術だから」という理由だけでは普及しないことを痛感してきた。

 ファインバブルは、なぜなかなか普及しなかったのか。それは、関係各社がバラバラに事業を展開していたからである。それ故、市場から信頼を十分に得られず、協業によるイノベーションも生まれにくい状況にあった。