事業環境が年々厳しくなる中、R&D部門は、技術を基軸とした事業・商品企画やコストダウン、開発設計期間短縮などさまざまな課題に取り組み、業務のレベルアップを図っていくことが求められています。この課題解決に向けて、R&D部門内で業務改革に取り組んでいる企業は多数あります。さらに10年ほど前からは、ITを活用したR&D改革に、IT部門などが主導して取り組むケースも増えてきました。

 R&D部門が活用するITの1つに「PLMシステム」と呼ばれるITツール群があります。これは、BOMや図面、ドキュメントなど技術情報を管理するシステムに加え、設計・解析や評価ツール、プロジェクト管理ツールなど、R&Dのさまざまな業務を支援するITツールが該当します。しかし、PLMシステムを活用した業務改革は、なかなか期待成果に結び付かないという悩みを抱える企業が多く存在します。

PLMシステムを活用した業務改革の問題点

 PLMシステムを活用した業務改革については、本誌連載記事にもこれまで何度か登場しましたが、『日経ものづくり』2014年4月号の「10年の動きから見通すものづくりの将来」という調査記事の中で、製品の差異化で“優位性を確保できている理由と確保できていない理由”が、2004年と2014年でどのように変化したか掲載されています。

 これによると、製品の差異化で優位性を確保できている理由で、ITツールに関してデータから以下2点が見て取れます(図1)。

・2004年も2014年も、差異化で優位性を確保できている理由として、「ITツールで開発期間・コストを圧縮している」の順位は最下位

・ITツールの活用により優位性を確保できていると認識している企業の割合は、2004年に比べて2014年でさらに減少している

図1●差異化で優位性を確保できている理由
図1●差異化で優位性を確保できている理由
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