国際宇宙ステーション(ISS)を起点に人類の存在領域を太陽系へと拡大し、最終的には有人火星探査を目指す――。国際宇宙探査協働グループ(ISECG=International Space Exploration Coordination Group)が定めた、国際協働による有人宇宙探査に関する、ISSの次なる長期目標だ。「国際宇宙探査ロードマップ」(GER=Global Exploration Roadmap)は、この目標に向けた長期的な戦略をまとめたものである(図1)。

図1●GERにおける有人探査ミッションのシナリオ
2014年7月31日開催の「国際宇宙探査シンポジウム2014」で展示されたパネルの一部。
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 JAXAの月・惑星探査プログラムグループ 月拠点システムチーム長の佐藤直樹氏によれば、「我々人類は現在、ISSによって宇宙探査に踏み出したところ。そうした人類が長期的な目標として掲げたのが有人火星探査である。ISSというスタート地点と、有人火星探査というゴール地点がまず決められた。その中で、では、どのようなステップを踏んでゴールに向かっていくべきかを示したものがGERだ」(2014年7月31日開催の「国際宇宙探査シンポジウム2014」における同氏の講演から、図2)。

図2●GERについて講演するJAXAの月・惑星探査プログラムグループ 月拠点システムチーム長の佐藤直樹氏
2014年7月31日開催の「国際宇宙探査シンポジウム2014」から。
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 国際協働の形で有人宇宙探査に取り組むのは、有人宇宙探査には膨大な費用が掛かる上、多大な困難を伴うと想定されるからだ。宇宙探査の技術を持った国々が集まり、協働しながら活動を進めていく。それにより、持続的かつ現実的な予算で共通目標である火星有人探査を可能にしよう、という狙いがそこにはある。

 GERの初版は2011年に、第2版(現時点での最新版)は2013年にそれぞれ公開された。作成したのは、ISECGだ。具体的には、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、イタリア宇宙機関(ASI)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、ウクライナ国立宇宙機関(SSAU)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、欧州宇宙機関(ESA)、韓国航空宇宙研究院(KARI)、ロシア連邦宇宙局(ROSCOSMOS)、カナダ宇宙庁(CSA)、インド宇宙研究機関(ISRO)、米航空宇宙局(NASA)、英宇宙庁(UKSA)の12機関である。中国国家航天局(CNSA)、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)もISECGのメンバーだが、GERの作成には参加しなかった。

 GERは宇宙機関レベルでの国際的な合意であり、政府レベルでの国際有人ミッションに関する協議(ISEFというフォーラム)において議論を進めていく上での基準になっていくものとされている。