先日、視力の悪い人でも裸眼で見られるディスプレーの研究開発が行われていることを知りました。例えば、米国のUniversity of California, BerkeleyとMassachusetts Institute of Technology(MIT)のグループ、日本では名古屋工業大学が研究を進めています。これまでは眼鏡やコンタクトレンズに“視力矯正機能”を持たせていたわけですが、この機能をディスプレーの方に持たせようという取り組みです。

 開発中のディスプレーは、近視、遠視、乱視、老眼のすべての視力矯正に対応できるとのこと。そうはいっても、そのディスプレーを見るとき以外は眼鏡を掛けたりしなければなりません。従って、有用な用途が見当たらないようにも思えますが、目の悪い私にとっては朗報です。

 私は強度の近視ですが、眼鏡を掛けるのが煩わしくて、好きではありません。牛乳瓶の底のようなレンズは重たく、見映えも悪いものです。そこでソフトコンタクトレンズを愛用しているのですが、こちらは残念ながら乱視の矯正機能がありません。特に、ディスプレーの文字を見るときに苦労します。私の乱視の目でも文字がきちんと見えるようにディスプレー側で表示を調節してくれたら、とても助かります。スマートフォン、タブレット端末、パソコン、カーナビゲーション・・・。役立つ場面は多そうです。

 そこで、ふと思いつきました。この技術を使えば、ディスプレーを見続けることによる視力低下を抑えられるのではないかと。視力低下の原因は様々ですが、そのうちの1つに、目の筋肉が異常に緊張し続けることがあります。少しでもぼやけたものを見ていると、目は何とかピントを合わせようとするので目の筋肉が緊張し続けてしまいます。ディスプレー側で見え方を調節できれば、常にピントの合ったクリアな表示を見られるようになるので、目の筋肉の緊張を緩和してくれそうです(もちろん、近くのモノを狭い視野で集中して長時間見続けることは視力低下の要因になりますので、ほどほどが大切ですが)。

 視力以外では、耳の不自由な人にもっと役立つディスプレーの技術の開発が進んでいることも、最近知りました眼鏡型ディスプレーを用いたAR(拡張現実)の手法で、映画の字幕をあたかもスクリーン上に表示しているかのように見せる技術です。これを使えば、字幕が煩わしいと感じる人とも、一緒に映画を楽しむことができます。応用は耳の不自由な人以外にも広がりそうです。例えば、字幕の多言語対応も簡単になります。

 様々な技術が進化し、成熟化が進んだ結果、それぞれの技術は基本性能での差異化が難しくなっています。ディスプレーも同じです。例えば画質では、以前ほどの差異化は難しくなりました。今後は、「視力が低下しにくい」「耳の不自由な人にもっと役立つ」といった、人に優しい技術が差異化のポイントになるように感じています。