iPhoneの次機種であるiPhone 6には、ディスプレーが4.7インチ、326ppiタイプと5.5インチ、401ppiフルHDタイプがあると噂されている。バリューチェーンの動きを見る限り、主要部品が一通り揃うのが、「最速で4月後半~5月前半、組立開始が最速で5月後半~6月前半」と推測していた(4.7インチの場合。5.5インチは4.7インチよりも2~3か月以上の遅れ)。しかし、Application Chip(TSMC)はほぼ想定通りの立ち上がりと見ているが、液晶パネルは遅れ気味である。4.7インチについては、パネル生産(前工程のガラス投入)が開始され、先月よりはスケジュール感が見えてきたものの、モジュール側が今一つはっきりしない。

 4.7インチ向け液晶パネルは、最も早い日本のパネルメーカーで、5月から量産(ガラス投入:アレイ前工程)が開始されたと見られる。ただ、後工程のモジュールのほうが、部材などの動きが鈍く、モジュールとしての本格的な出荷は6月後半以降と想定される。

 残りの2社(日本・韓国1社ずつ)も順次量産を開始しており、最も早いメーカーよりも1カ月遅れ程度で数量が上がってきそうである。ただし、当該液晶パネルは、(1)ネガ液晶材料、光配向プロセスなど新技術を採用、セル工程での歩留まりが未知数(読みにくい)であること、(2)各社とも第6世代(G6)ラインの工場での生産が主(一部、G5.5/G4.5もあり)であり生産の難易度が高いこと、(3)上記のとおりモジュール部材の動きがアレイ前工程に比べ遅いこと、などから、予断を許さない状況が続く。

 6月に入って、上記モジュール部材のうち、バックライトで使われる一部フィルムに遅延や仕様変更の動きが見られる。その結果、バックライト自体も設計が変更されたと見られ、その分、モジュール生産に(当初見込み比で)遅れが生じている。現時点では、6月出荷はごく少量にとどまり、本格的なモジュール生産・出荷は7月からとなる可能性が高い。

 上記の立ち上がり状況(最善ケース)からすると、鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry Co., Ltd.)および台湾Pegatron社におけるiPhone 6の組み立ては、7月末までに開始が可能な状況となる。組み立て開始が遅くとも8月中に始められれば、iPhone 6の発売時期は、当初想定通りの9月になる可能性が高いと、現時点では見ている。

 ただし、3Qの生産数量については、当初予定していた水準の達成は難しくなってくるだろう。2年前のiPhone 5発売時にインセルタッチ内蔵の液晶パネルが歩留まり問題で思うように生産できなかった時にやや状況が似ている(iPhone 5は発売前に2500万-3000万台生産するはずが1000万台程度にとどまり、発売初期は深刻な供給不足となった)。