近年、環境汚染ガスによるHDD不良が増える傾向が見受けられる。ただし、ガスが原因である場合でも、HDDメーカーや最終製品のメーカー、分析会社に故障したHDDの調査を依頼すると、ヘッドの故障・振動衝撃による故障など、別の原因が報告されるケースが少なくないようだ。今回は我々が調査依頼を受けたHDDの故障原因の中で、環境汚染ガスが原因となったものについて解説する。 我々が調査し、環境ガスが原因で故障したと判定した事例には、製造設備のコントローラ、パソコン、レコーダー、POS端末など幅広いジャンルの機器が含まれている。

環境汚染ガスによる不良発生箇所

 環境汚染ガスによって発生した不具合としては、基板端子の腐食(写真1、図1)、媒体潤滑剤の劣化(図2)、媒体磁性膜の腐食やヘッドの読み出し/書き込み用の磁性層の腐食(図3)などがある。

写真1 腐食した基板端子
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 図1 化学分析装置により基板端子の成分同定をした結果。本来見られないS(硫黄)の成分を検出している。
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 図2 媒体潤滑剤劣化による膜厚の減少  
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図3 ヘッドの磁性層の腐食
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 現象としては稼働時間が1~2年以内で、故障が多発する例が多い。中には稼働開始後、数カ月で故障に至る例もある。 基板端子が腐食するとHDDへの通電が不通となり、HDDは起動しなくなる。媒体潤滑剤の劣化はヘッドの浮上量を不安定にして媒体表面に傷を付ける。この結果、エラーが多発し、最終的にはヘッドが媒体情報を認識できなくなり、故障に至る。また、ヘッド金属部の腐食も媒体情報の認識ができなくなる原因となる。