6月はEMS(電子機器受託製造サービス)/ODM(Original Design Manufacturer)大手が集積する台湾でも株主総会のシーズン。2014年の株主総会では、株主から生産工程の自動化の進捗を尋ねる質問の出た企業が多かったようだ。EMS/ODMや周辺産業が生産拠点の大半を構える中国で人件費の上昇が続き、これら企業の経営に大きな負担になっているとの認識が、企業側のみならず株主の間にも広がっていることをうかがわせるものだが、企業側の回答から、自動化が着実に進んでいることを垣間見ることができた。今回はその幾つかを紹介してみようと思う。

 まずはEMS世界最大手、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕の香港上場子会社でスマートフォン(スマホ)受託生産のFIH Mobile社(富智康)。フォックスコンというと、米Apple社のスマホ「iPhone」生産で有名だ。ただ、FIH Mobile社は繁忙期などを除くと、基本的にiPhoneの生産には関わっていなようで、かつてはフィンランドNokia社や米Motorola Mobility社を大口の顧客としてきた。ただ、この2社がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマホへの移行でつまづいた影響を受け、FIH Mobile社も業績が低迷していた。

 ただ2014年は、ネット通販世界最大手の米Amazon.com社が6月半ばに発表した同社初のスマホ「Fire Phone」の生産を独占受注したと見られている他、ソニーモバイルコミュニケーションズのスマホ「Xperia」シリーズ、台頭著しい中国Xiaomi社(小米科技)など、話題や注目を集めるモデルを複数受注しているようである。

 そのFIH Mobile社のトップである童文欣主席は株主総会を開催した2014年5月29日、生産ラインの自動化を推進して人員削減を図る意向を示した。同社の主要生産拠点は中国河北省の廊坊という町にあるのだが、童主席は従業員数が2013年末時点で6万3500万人と、2012年末に比べ6500人減少したと紹介。その上で、生産ラインでは徐々に自動化を進めており、ライン1本に配置する人数は直近で30~40人と、かつての50~60人から減らしたことを明らかにしている。