半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」。今回のテーマは「どうしたLED市場」である。今回のテーマでは、予想外の市場停滞に見舞われているLED市場が再び成長に転じるための成長基軸や技術開発の論点を、照明向け市場の現状と対策を中心に洗い出す。今回はテクノ・システム・リサーチ(TSR)から、LED分野を担当する藤田光貴氏と、照明分野を担当する太田健吾氏が分析する。
テクノ・システム・リサーチ アシスタントディレクター
テクノ・システム・リサーチ 研究員
【質問1の回答】LEDの低廉化が加速し、金額規模の成長ペースが減速
LED市場の中でも白色LED市場の成長が期待されている。白色LEDは主に、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器向けの液晶バックライトに使用されてきた。白色LEDの高光束化に伴い、薄型化などの筐体デザイン向上や省電力化などを目的に、LEDを光源とする「LED TV」向けバックライト市場が急速に拡大した。
LED TV向けバックライト市場の急速な拡大に備えて、LEDメーカーは生産設備への大規模な投資を行い、LEDの急速な生産立ち上げを余儀なくされた。そのため、LEDの生産歩留まり向上が大きな課題となった。そこで一部のLEDメーカーは、バックライトと照明向けの両方をターゲットとする生産体制を構築していくことになる。これによって一定の生産歩留まりの維持が可能となり、LEDの低廉化を実現する後押しとなった。
近年、省電力化や水銀レスなど環境への配慮から、照明市場向けでもLEDの採用が進んでいる。照明市場では、白熱灯や蛍光灯の代替光源としてLED電球や直管型LEDランプが急速に市場を拡大している。
しかしながら、国内では東日本大震災の影響で省電力化の推進が重視されたため、LED電球や直管型LEDランプなどのコモディティ化が急速に進んだ。照明用途はLEDの新規市場として一定の付加価値が見込まれていたが、白色LEDの急速な低廉化によって金額規模の拡大が不透明となっている。