半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」。今回のテーマは「どうしたLED市場」である。今回のテーマでは、予想外の市場停滞に見舞われているLED市場が再び成長に転じるための成長基軸や技術開発の論点を、照明向け市場の現状と対策を中心に洗い出す。第3回は、液晶パネルの光源向けを中心に、LEDメーカーの動向を長年調査してきたディスプレイサーチの宇野匡氏が、供給側の観点から先行きを見通す。

宇野 匡
ディスプレイサーチ アナリスト

【質問1】現在、LED市場はなぜ停滞しているのでしょうか?
【回答】 LED照明市場が拡大してもそれを上回る供給過剰の構造があるから

【質問2】電球、蛍光灯をLEDに完全代替するための必要条件は何でしょうか?
【回答】 現状のままでもLEDへの完全代替は5年以内には実現する

【質問3】LEDメーカーは、需要喚起に向けて、どのような施策を採るべきでしょうか?
【回答】 従来とは違った魅力ある照明機器が必要

【質問1の回答】LED照明市場が拡大してもそれを上回る供給過剰の構造があるから

 これまで私は、ディスプレー用バックライトからLEDを調査してきた。このため、LEDチップとパッケージの動向を基にした供給側の視点から考えたい。

 まず、LED照明の市場が立ち上がった経緯を振り返る。バックライト用の光源がCCFLからLEDへ本格的に切り替わったのは、2009年以降である。同時に韓国と台湾のメーカーによるMOCVDへの投資が活発になった。2010年以降は中国メーカーの投資が盛んになり、中国政府もこれを援助した。その結果、バックライト用LEDパッケージは、あっという間に供給過剰となり、価格が下落することにより、CCFLからのシフトをすばやく完了してしまった。2014年第1四半期で、CCFLの出荷はなくなったとの情報がある。

 供給過剰となったLEDパッケージは当然、他の用途へ振り向けられることとなる。立ち上がり始めたLED照明は格好の用途となった。LEDバックライト用に設計された5630などのLEDパッケージが大量に照明用に供給されている。現在、韓国Samsung Electronics社や韓国LG Innotek社が、日本の照明機器向けに大量にLEDパッケージを供給している。ラインを稼働させるためにLEDパッケージの価格を下げており、日系LEDメーカーは苦戦を強いられている状況だ。このような状況から、LED照明の市場が拡大しても、売り上げが伸びない状況になっていると考える。

 根本には供給過剰の構造がある。2010年に投資された中国のMOCVDが、2012~2013年に稼働を開始している。現在はまだ発光効率が劣るため、バックライトにも使用されていないが、今後1~2年以内にバックライトと照明用に供給が開始されるだろう。バックライトはLED発光効率の向上に伴い、今後も1台当たりに使用される個数が減少すると予測されている。このため、台数は増加してもLED総数はマイナス成長と予測される。LED照明市場が拡大してもそれを上回る供給過剰の構造になっているわけだ。