拙宅の近くにある大型モールにアップル社の直営店であるアップルストアが出店したのは7~8年前のことでした。2年ほど前、そのアップルストアの数軒先にマイクロソフト社の直営店であるマイクロソフトストアがオープンしました。

 スペースはアップルストアの1.5倍はあるでしょうか。ディスプレーは一見スマートです。しかしながら、客の入りは今ひとつで、それほど多くない店員はだいたい暇そうにしています。アップルストアがいつも多くの客であふれていて、かなりの人数の店員が対応に追われているのに比べると対照的です。IT業界における二つの巨大企業の動きが反映されていて、なかなか興味深いものがあります。

マイクロソフトストア
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アップルストア
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ストアを重要視するアップル

 アップルストアは、北米を中心に300数十店を展開しており、日本では銀座、渋谷、心斎橋といった繁華街の目に付く所にあります。販売している主要商品は、創業時からのPCのほかに、iPod、iPad、iPhoneの三つだけで、あとは関連アクセサリーが若干あるだけです。しかし、これらの4つの商品は有機的に関連し合っており、カスタマーはその一つを購入すると、他の3つの製品も欲しくなってしまう仕組みになっています。

 それを繋いでいるのが、広い意味でのソフトウエアで、OSを含めた主要部分は常にハードウエアとソフトウエアがセットになっており、基本的に自社開発製品です。アップルストアでは、その全てを販売しているわけです。年間10兆円以上、利益1兆円以上を稼ぎ出す上で、重要な役割を担っています。単に商品を宣伝販売するだけではなく、カスタマーのトレーニング、クレームの受け付けや修理、カスタマーへのアドバイスなどを組織的に行っています。

 さらに、これらの活動を通じて得られたカスタマー情報をまとめて、次期商品開発の源泉にしているのです。このため、アップルストアでは、専門知識に精通したスタッフがそろっています。そのために必要な時間と費用は膨大なものになると考えられます。逆の見方をすれば、アップル社がいかにアップルストアの運営を重要視しているかが分かります。