半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」。今回のテーマは「ファウンドリー主導で決まる半導体業界の未来」である。
今回のSCR大喜利では、さまざまな半導体メーカーが外部ファウンドリーの利用やファウンドリーサービスの提供を始め、そしてファウンドリー専業企業の存在感が大きくなっていく先に、どのような半導体産業の姿があるのか、見通すことを目的としている。今回の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー
世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。
【質問1の回答】ハイエンドロジックで進む一方で、境界線の曖昧化も
現在からの延長で考えると、ハイエンドなロジックでは、先端プロセス投資に見合った需要を保持できている米Intel社ならば、今後もIDMモデルを維持できるだろう。しかし、他のIDMは投資に見合った受注が困難であり、先端プロセスからファウンドリー活用比率が高まっていくと思われる。他方、ハイエンドなロジック以外の領域では傾向は異なる。ここでは、むしろ少量多品種の小回りの良さの追求や車載向けに代表されるような信頼性の追求などからIDMモデルが残存し得るだろう。
ただし、ファウンドリーとファブレスの将来的な構図を考える上では、2つの変局可能性があることに留意が必要だ。ひとつはファウンドリーとファブレスの境界線である。Intel社や韓国Samsung Electronics社がファウンドリー・ビジネスを手掛けたり、イスラエルTowerJazz社がパナソニックの工場に出資したりといった形で、その境界線は徐々に曖昧になってきている。もうひとつの変局可能性は中国の動向だろう。国を挙げて積極的な半導体産業育成を図っている中国であるが、同国の投資がファブレス系メーカーの育成側に振るのか、併せてファブ側のプレーヤーも育成しようとするかによって、グローバルに見たファウンドリーとファブレスのバランスも影響を受けるだろう。