「機密情報の漏えいを防ぐことは可能か」をテーマに、日本の半導体関連の企業や技術者が置かれている現状と機密情報の取り扱いの在り方を論じるSCR大喜利。第4回の今回は、これまでにもSCR大喜利で異彩を放つ数々の回答を寄せていただいた微細加工研究所の湯之上 隆氏が登場。論点は、漏えいされる側の緩さである。
各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。
微細加工研究所 所長
日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。
【質問1の回答】完全防止は不可能だが、ある程度は可能
水が高い所から低い所に流れるように、情報も格差があれば拡散していく。それを完全に止めることは不可能である。
しかし、ある程度の防止は可能である。そのためには、性悪説にのっとって、会社が社員とガチガチに秘密保持契約を結び、その契約通りに社員が秘密を守っているかを徹底的に監視し、もし守られていない証拠をつかんだら訴訟を起こす、ということが必要である。
上記を実行している会社が実際に存在する。その会社ではまず、社員を雇用する際に、かなり厳格な秘密保持契約を結ぶ。雇用後も、社内電話やメールなどを全てチェックすることにより、社員の監視を怠らない。監視するための専門の部署を設け、その部署の担当者はスパイのように常時社内に監視の目を光らせている。社員が退職する場合は、「退職後においても在職中に取得した情報を外部者に開示しないこと」、「3年間は競合他社には転職しないこと」などを明記した契約書にサインさせる。そして、退職者の動向を追跡し(尾行することもある)、契約書に違反した場合は、躊躇なく刑事告訴する。このくらい徹底すると、社員および退職者は恐怖のあまり情報を漏らさなくなる(かもしれない)。