2013年の夏以降、仕事や私用で毎月1週間から10日間程度、上海の自宅を留守にすることが続いている。家族はみな日本にいるので、私が留守にすると上海の家には飼い猫が1匹残されることになる。そこで中国人の知人に、地方から上海に出てきてパートタイムで家政婦をしているという友人の女性を紹介してもらい、餌やりと猫のトイレの掃除に留守中は毎日来てもらうことにしている。

 仕事自体は15分もあれば終わるのだが、彼女は上海の郊外に住んでいるので、私の家に通うには地下鉄で往復2時間かかるという。知人の友人ということもあるし、2時間かけて来てもらって杓子定規に1時間分の料金しか払わないというのも申し訳ないので、出勤にかかる時間も計算に入れ、3時間分プラス交通費(往復10元、1元=約16.5円)で値段を出してくれと伝えたら、50元という提示が来たのでそれでお願いすることにした。それが2013年8月のこと。以来毎月1回のペースでお願いしていた。

 それが2014年の3月中旬、今月もまたよろしくと願いするために連絡をしたところ、報酬を見直してくれないかとの返事が来た。物価も上がっていることだしと思い、いいですよ、いくらですかと提示を求めたところ、交通費含めて60元でとの要求が来た。この間、地下鉄運賃の値上げはなかったので、1時間当たり3元強の値上げ。まあそんなものかと了承した。

 それから数日後の3月末、上海の最低賃金が同4月1日から引き上げられるという報道を見た。家政婦さんの賃上げ要求はこの動きに敏感に呼応したものだったのである。

 4月1日に最低賃金が引き上げられたのは上海、北京、天津の直轄市3市。この3市以外にも、2014年に入って重慶市、陝西省、深セン市、山東省で最低賃金の改定が行われている。うち2013年に1620元で最低賃金が全国で最も高かった上海は、約12%引き上げられて1820元となった。月額の最低賃金では今年1月に引き上げを実施した広東省の経済特区・深センが1808元で首位に立っていたが、上海が再びこれを抜き返した格好だ。

 上海は時給換算でも2013年の14元から約21%引き上げられ17元となり、月額、時給いずれも現時点で中国最高となっている。ちなみに、猫の世話を頼んでいる家政婦さんが私に提示してきた額も、ほぼこの最低賃金に沿ったものである。