焼きギョーザを好きな方は多いだろう。仕事帰りに、焼きギョーザをつまみにビルで軽く一杯。仕事で疲れた会社員にとって至福のひと時だ。ところで、美味しい焼きギョーザと餃子の元祖である水餃子との違いを知っていますか。そして、焼きギョーザを食べるときに、「ハイテク」の「味」を感じていますか。ということで、今回は、「ハイテク」の視点から美味しい焼きギョーザの特別な「味」を考察してみる。焼きギョーザは「発明」であり、「イノベーション」である。

日本に来たころのショック

 筆者が日本に来たばかりのころにこんな出来事があった。大変お世話になった日本の友人を家に招待することになった。おもてなしの料理として何を作るか、いろいろ考えていた結果、水餃子を選んだ。かなり手間がかかるが、やはり手作りということもあって、感謝の気持ちを込められる最適な料理だとと思った。

 日本では、餃子といえば、やはり焼きギョーザだろう。しかし、中国では、餃子は普通、水餃子である。水餃子は中国の家庭料理の代表格であり、家庭で家族と一緒に食べるだけでなく、一緒に作るのがその大きな特徴だ。生地、具、そして生地を小分けして作る皮、その皮で具を覆う包み。どれも手作りで、家族全員が協力して完成させる。それが家族の匂いを感じさせ、餃子の味をさらに美味しくする。

 何を具にするか、悩んでいた。中国で人気があり、かつ日本人にも受け入れられ、美味しいと思われる具は何か。日本に来たばかりで、日本人を餃子でもてなした経験が全くなかった。結局、最後はやはり自分が一番美味しいと思う具が一番よいと素直に考え、みじん切りにしたニラと、炒めた卵を混ぜて定番のニラ餃子にした。シンプルだが、ニラの独特の香りが引き出され、さらに新緑のような緑のニラと黄色の卵の彩りがきれいで、自分の選択は間違いないはずと自信満々だった。

 そして、その日、我が家を訪れた友人の家族数人と、一緒に楽しく皮を作って具を入れて包んでもらい、最後は筆者が仕上げて水餃子を完成させた。友人は、熱々の水餃子を口に入れた。筆者は、自信作の具が美味しいと評価されるに違いないと思っていた。しかし、友人が発した第一声は、「皮が凄く美味しい」というものだった。私はそれを聞いて唖然としたことを、今でもよく覚えている。自慢の具がほめられずに、ごく普通の皮がほめられた。それは筆者にとって全くの予想外の出来事だった。どうしてこの皮が美味しいのか。その時は全く理解できなかった。