2014年に入って、スマートフォンと車載機の連携に関する動きが一気に活性化してきました。具体的には、米Google社が「2014 International CES」に合わせて発表したAndroidとクルマの融合を目指す取り組み「OAA(Open Automotive Alliance)」、米Apple社が「Geneva Motor Show 2014」に合わせて発表した「CarPlay」があります(関連記事1)。

 この他、フィンランドNokia社が主導して2011年に立ち上げたCar Connectivity Consortium(CCC)の「MirrorLink」も、日本での取り組みが加速しています。日本の車載機への情報提示の業界ガイドラインに沿う形で日本用MirrorLinkアプリ開発のガイドラインが2014年1月にCCCのサイトで公開され、今後、日本向けMirrorLinkアプリの認証が始まる見込みです(関連記事2)。2014年3月25日にはこのガイドラインなどを解説するセミナーが開催される予定になっています(セミナーの告知サイト)。

 OAA、CarPlay、MirrorLinkのいずれも、現時点ではスマートフォンに入っている音楽やアプリを車載機でも楽しむための仕組みです。これらの動きは、クルマに音楽CDやDVDビデオなどを持ち込んで車載機で再生するという延長線上に位置付けられるものと言えそうです。つまり、CDやDVDに続く、新しいメディアとしてスマートフォンが加わったというわけです。

まずは新しいメディアとして受け入れられるが…

 もちろん、スマホと車載機の融合はこれが終着点ではなく、端緒と見るべきです。スマホはCDのような単なるメディアとは異なり、通信機能を持ちます。現時点ではスマホの機能を車載機で再生するのが主用途でしょうが、車載機から情報を吸い上げて、クラウドに送ることがだんだんと主目的となってきそうです。

 自動車メーカー側がスマホとの連携に対して積極的なのも、利用者に利便性を与えるためという点があるでしょうが、それ以上にそうした将来を見据えているからだと思われます。スマホを介して、車両の各種データをクラウドに吸い上げ、これを解析して顧客に渋滞情報サービスのような形で情報をフィードバックする他、新製品開発ための情報収集や保険、盗難対策などの新しいサービスにつなけるというものです。これまで、営業担当者による電話や販売店への顧客の来訪などしか、顧客とつながる接点のなかった自動車メーカーが、この仕組みによって密に顧客とつながり、新しいサービスを提供し、これを収益にすることが期待できるわけです。

 当然ですが、自動車メーカーは製造者である自分だけが、車両からのデータを独占的に入手できるようにする戦略を採るでしょう。情報を囲い込むことができれば、利用者から継続的に情報を収集でき、この蓄積情報を活用したい利用者に自社の自動車を末永く使ってもらえる可能性が出てくるからです。

 一方で、Google社やApple社といった企業は、自動車メーカーの情報の囲い込みを切り崩す戦略に出るでしょう。やり方は分かりませんが、予測されるのは自社でクラウドシステムを構築できない、中小の自動車メーカーを切り崩して橋頭堡を作り、自動車メーカーが個別に構築するシステムよりも便利なサービスを用意することで、徐々に大手に迫るという戦略でしょうか。

 スマホとクルマがどのように融合するのか。誰がクルマデータの支配者になるのか。今後も、注目していきたいと思います。