難しい話が続いたので、今回は息抜きです。

 その昔、無線はおろか電線を使った通信網(電話ではなく、モールス符合の電信)すらなかった時代、「腕木通信」というシステムが主にヨーロッパで使われていました。軍艦の間で行われていた手旗信号を大型化・固定設備化したもの、と考えてもらえば分かりやすいかも知れません。

 今回はこの腕木通信を例にとって、OOK、ASK、FSKなどの変調方式と、「シンボルと情報量」という概念について説明してみようと思います。

 まず、実際に使われていた腕木通信塔の原理図を示します。支柱の上で自由回転する腕と、腕の両端の「ヒジ」の角度の組み合わせでシンボルを示します。ここに示したアルファベットに加えて「0~10」の数字も表現できたようです。すなわちシンボル当たり37状態、log237 = 5.2ビット/シンボルの情報量を持つことになります。16QAM (4ビット/シンボル)と 64QAM (6ビット/シンボル)の間くらいの情報密度ですね。

 なお資料によっては本図に対して左右反転状態で示されているものもあり、腕木を「前から見た図」なのか「裏から見た図」なのかで分かれるようですが、どちらが「前から見た図」なのかは判らないことを記しておきます。

史実の腕木通信塔とシンボル