このコラムでは中国と台湾のことを毎回のように取り上げている。例えばEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、米Apple社のスマートフォン(スマホ)「iPhone」を中国河南省の工場で製造しているといった具合に。EMS/ODM(Original Design Manufacturer)大手の台湾系企業にとって、中国は重要な生産拠点。中国にとっても台湾系のEMS/ODMは大きな雇用を生み出してくれるなど、互いになくてはならない存在であり、相互依存も強い。

 ところがこの中国と台湾が双方の政府を認めていないのは周知の通り。その中台が2014年2月11日、1949年の分断以降初となる閣僚級会議を江蘇省南京で持った。その後、同18日には台湾の連戦国民党名誉主席が北京を訪問し、習近平国家主席や北京市のトップである郭金龍共産党委員会書記と会談した。

 さて中国、台湾政治家らの一連の会談で興味深いことがあった。北京の郭書記が、会談した連氏に対し、お土産として「中国のApple」として日本でも最近、名前が知られ始めたスマホの新興ブランド、Xiaomi社(小米)のスマホ「紅米」を2台、贈ったのだ。

 紅米は、Xiaomi社が入門機クラスの市場を狙って2013年に投入したスマホ。799元(1元=約17円)という低価格がうけ、これまでに1000万台を売り上げたのではないかと市場では見られている。

 調査会社米Gartner社によると、2013年のスマホ世界シェアでは、中国Huawei社(華為)が4.8%(販売台数4660万台)で第3位、中国Lenovo社(聯想)が4.5%(同4390万台)で第5位に入った。フィーチャーフォン(従来型携帯電話)を含めた携帯電話全体の統計でも中国ZTE社(中興)が3.3%で第5位、Huawei社が2.9%で第6位、中国TCL社が2.7%で第7位、Lenovo社が2.5%で8位、「CoolPad」(酷派)のブランド名で展開する中国Yulong社(宇龍)が第10位と、中国系はトップ10に5社がランクインしている。中国系の躍進には、中国が13億という世界最大の人口を抱えていることがもちろん影響している。ただ、国内市場で蓄積した経験、技術、資金力を背景に世界のスマホ市場においても確実に存在感を増しているのは間違いない。