地上からは見られない美しく鮮烈な映像を撮影

 民生品の4Kカメラを宇宙でも使用できるようにするために実施したのが、例えば、以下のような対応だ。 (1)結露による故障や金属粉の飛散を防止できるように電気基板をコーティングする(耐環境性や安全性の向上)
(2)難燃材を使うか燃える可能性のある材料は難燃材のテープなどで覆う(火災防止対策)
(3)無重力下では対流による放熱を期待できないので、電源を遮断するなどの工夫により高温になりすぎる箇所ができないようにする(宇宙飛行士のけが防止)
(4)鋭いエッジで手を切らないように対策を施す(同)
(5)宇宙船内が減圧した場合でも安全が維持できるように破裂などにより危害を及ぼす可能性のある電気部品を安全な部品に交換する(真空対応)。

 実はこれらは、JAXAがきぼうの開発・運用で蓄積してきた有人宇宙安全技術や民生品の宇宙搭載化技術を生かしたもの。それにより、「6カ月という非常に短い期間で、民生品を宇宙でも使えるようにするのに必要な改修や試験を行うことができた」(JAXA)という。民生の最先端カメラである4Kカメラを世界に先駆けて宇宙で使用できるようになったのは、こうした蓄積があったからだ。

ISSから撮影したアイソン彗星の動画から抽出した静止画
写真:JAXA/NHK
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ISSから撮影したオーロラの動画から抽出した静止画
写真:JAXA/NHK
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 JAXAによれば、「4Kカメラを使うと、地上からは決して見ることができない美しく鮮烈な映像」を撮れるという。4Kカメラを使ってISSからアイソン彗星や地球のオーロラなどを撮影した若田氏は、そのときの感想を次のように述べている。

「ISSから宇宙を見ると、地球から見るのとは違い、星々が3次元的に奥行きを持って広がって見え、宇宙の広大さを実感します。こうした息を飲むほど素晴らしい光景を、ぜひ皆さんに届けたいと思います。実際に超高感度4Kカメラを使ってアイソン彗星やオーロラを撮影したとき、モニターに映し出された美しい光景に驚かされました。今回のような機会に出会えたことは素晴らしいことですし、これから彗星が最も明るく輝く時まで、できるかぎり良い映像がとれるように努めたいと思います」