B2Bなら仕掛けが必要

 ある部品を使っていることが最終製品の強みにならないことには、その部品を供給している企業はB2Bビジネスで優位に立てません。従って、その部品を供給する企業がそのブランドをいくら有名にしても、その部品を使っていると最終製品がうたわないのなら部品メーカーのブランドは最終製品を作る企業にとって何のメリットもありません。

 そもそも使用している部品の優秀さをうたったところで消費者が買うとは限りません。消費者は最終製品やその製品が提供してくれる機能が欲しいので会って、使われている部品が欲しいわけではないのです。

 さらに企業間取引に守秘義務もあり、自社の部品が使われている最終製品はあまり公にされることもない中で、部品メーカーが自社のブランドを高める意味はあるのでしょうか。

 前述の田中先生は、「B2BではB2Cに比べてブランドは効きにくい。B2Bでブランドを効かせるにはそれだけの仕掛けが必要」と言います。

 例えば企業の部品購入の担当者にとって、そのブランドがB2B取引の四つの条件に対して良い結果をもたらすのならば、B2Bビジネスでもブランドは有効になるということでしょう。

 新幹線の車両内の電光表示板で、ビジネスマン向けに部品メーカーが宣伝を流しているのは、田中先生の指摘する「仕掛け」の一つなのでしょう。つまり「実績があり信頼できること」をビジネスマンに対して訴えることで仕組みを構築しているのです。

 以上述べてきたように、ビジネス創造で押さえておきたい三つのポイント(下記)の一つである「ブランド」をうまく活用することで、「ものづくり」を「ことづくり」に拡張できることを活用し、新しい強みを持った、売り上げが持続するビジネスの創造に挑戦して頂きたいと考えています。そして、B2Cビジネスだけでなく、B2Bビジネスでもうまくブランドを使って頂きたいと思っています。

・ブランド
・デザイン
・ネットワーク

 ブランドとは、人びとが製品や企業に対して抱くイメージであり、製品や企業の認知を向上させることで、販売力を与えてくれます。正にブランドは、四つのフェーズの内の「認知開発」と密接に絡んでいるのです。ブランドは「ものづくり」を「ことづくり」に拡張するための重要な要素だと言って過言ではないでしょう。

生島大嗣(いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器、液晶表示装置などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。「成長を目指す企業を応援する」を軸に、グローバル企業から中小・ベンチャー企業まで、成長意欲のある企業にイノベーティブな成長戦略を中心としたコンサルティングを行っている。多数のクライアント企業の新事業創出/新製品企画・開発等の指導やプロジェクトに関わる一方、公的機関等のアドバイザ、コーディネータ、大学講師等を歴任。MBA的な視点ではなく、工学出身の独自視点での分かりやすい言葉で気付きを促す指導に定評がある。経営・技術戦略に関するコンサルティングとともに、講演・セミナー等の講師としても活躍中。
生島ブログ「日々雑感」も連載中。
中国ビジネス書の翻訳出版本である「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃」の監修・解説も担当した。