前回は、製造業界におけるドキュメント制作が置かれている現状と、ドキュメント作りの変革の必要性について解説した。今回は、ドキュメント制作に革命をもたらすDITAの基本的な概要と特徴、制作方式について解説する。
DITAとは
DITA(Darwin Information Typing Architecture)とは、ドキュメントの執筆から出力までをカバーする新しい制作手法に沿ったXML(Extensible Markup Language)ベースの規格である。DITAの手法を用いることで、ドキュメントを再利用可能な部品として制作でき、ユーザーに対しても分かりやすい情報を提供できる。また、目的の情報に早くたどり着ける枠組みも提供できるため、Webサイトの閲覧では一般的な読み方である“拾い読み”のようなスタイルとの相性も良い。
DITAは、国際的な標準化団体であるOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)が策定する標準規格であり、誰でも自由に無料で利用できる。2005年にバージョン1.0、2007年にバージョン1.1が公開され、現在は2009年に公開されたバージョン1.2が最新となっている。現在も継続してバージョン1.3の策定が進められている。
DITAの導入状況を見ると、欧米を中心とした海外での事例が先行しており、特に航空業界やIT業界、ハイテク産業での導入が進んでいる。近年、日本国内でも関心が高まり、自動車業界や電気業界、IT業界などで導入する企業が増えている。2009年には日本国内でのDITA普及を目的にDITAコンソーシアムジャパンが設立され、その企業・学術会員数は32社(2013年11月現在)となっている。
DITAの仕組み―トピックとマップ
DITAは、“トピック”という小さな単位でドキュメントのコンテンツを作成し、これを“マップ”という目次相当のもので組み立てる構造である。トピック、マップはいずれもXML形式で記述する。これらを組み合わせたものに、レイアウトや文字サイズなどを規定するスタイルシートを適用することでドキュメントを作成し、PDFやHTMLなどの成果物を出力する。
DITAは、読み物のような“Book”型での執筆方法ではなく、トピック単位で執筆する。また、DTP(Desk Top Publishing)のようにスタイルを確認しながらコンテンツを執筆するのではなく、執筆とスタイルを分離し、スタイルは自動組版によって生成する。この2点において、従来の制作手法とは大きく異なっているのである(図1)。