今回紹介する書籍
書名:中国社会各階層分析
著者:梁暁声
出版社:文化芸術出版社
出版時期:2011年1月

 今月取り上げるのは『中国社会各階層分析』。中国社会を9階層に分け、それぞれについて解説した書籍だ。1997年に出版され、13年間重版のなかった作品だが、2011年に最後の章を加筆、修正されて出版された。作者は中国の有名作家でその作品は日本語訳も出版されている(『一个红卫兵的自白』日本語版題名:ある紅衛兵の告白 1990年)。

 また、最近では2012年に出版された『郁闷的中国人』(憂鬱な中国人)が話題となっている。1949年にハルピンで生まれ、文化大革命時代には下放(知識層の青年を農村などに行かせ労働に従事させること)も経験しており、「知識青年(文化大革命時代に使われた単語で高等教育を受けている青年を指す)」を題材とした作品で知られている。現在は北京語言大学で教鞭を執っている。中国の「ウィキペディア」では「中国の『庶民の代弁者』と言われ、庶民の生活を描き既得権益者を批判している」との解説がついている。

 題名に「分析」とついているが、実際は小説家らしくエピソードが多用されており、学術的な分析を施したものではないが、その分、読みやすく分かりやすい内容になっている。1997年に出版されたときには以下の8階層について述べている。

(1)現代の資産家階層
(2)現代の「買弁(外国人と組んで仕事する人、侮蔑的な意味合いがある)」階層
(3)現代の中産階級層
(4)現代の知識人層
(5)都市の庶民と貧民
(6)農民
(7)農民工(農村戸籍の出稼ぎ労働者)
(8)現代の「黒社会」

 2011年版はこれに次の階層を加えている。
(9)現代の「灰色社会」

 この加筆は中国社会の複雑化を示すようで興味深い。

 では次週からはいくつかの階層を選んで本書での解説を紹介していきたい。